中村 祐太選手 (関東一)
寸評
今年の選抜では2年生投手の中では期待度ではNO.1の中村祐太。期待通りのパフォーマンスを遺憾なく発揮し、別府青山戦では2安打完封(13奪三振)、智弁学園、横浜にも完投勝利。選抜ベスト4に導いた。大会後、痛めていた股関節の影響で、公式戦の登板は殆どなかったが、夏へ向けて、復活はなるか。 (投球内容) ストレート 141キロ 常時135キロ~140キロ スライダー 120キロ前後 チェンジアップ 120キロ前後 カーブ 105キロ前後 ひと冬越してストレートの回転数は更に増し、狙って空振りが奪える恐ろしいストレートとなった。別府青山戦では13奪三振のうち12個がストレート。さらに10個が空振り三振だから、彼のストレートは空振りが奪えるストレートであることを証明して見せた。回転数が高いストレートはバットの下を叩くためフライが多くなる。つまり威力がある場合は空振り・フライを面白いように取れるが、疲れにより威力が半減すると打者の予測とピタリと合って、オーバーフェンスされるリスクもあるということ。特に2回戦の智弁学園戦は本来のストレートではなく、ひやひやしながら見ていた。 2回戦以降の中村のストレートは本来のものではなかった。フォームが乱れたとしても、これほどコントロールを乱すことはないだろうと思っていたら、大会中に股関節の痛みが出ていたようだ。投手にとって股関節は重要な部位であり、パフォーマンスに大きく影響する。 決めに行くストレートが殆ど高めに行く。意図したところへ投げられない悪循環で、球数が重なる。あの状態で選抜ベスト4まで勝ち進んだこと自体、素晴らしいことだが、崩れたフォームで球数が蓄積されれば、更に大けがにつながるので、選抜以降、スローペースで調整してきたのは賢明な判断だ。 変化球はスライダー、チェンジアップ、カーブの3種類。ほぼストレート一本のみで抑えていた昨秋と比べると変化球の頻度は多くなった。 それでも配球パターンは直球中心であり。智弁学園戦では小野耀平相手にオールストレートでねじ伏せた。威力あるストレートしか全国の強打者相手に通用しないから直球主体にならざるを得なかったが、直球をベースとして決め球になる変化球を習得出来るようになると一層に良いだろう。 (クイック・牽制・フィールディング等) クイックは1.1秒~1.2秒前後と素早いクイックを見せており、走者の警戒、フィールディングの動きも良くなり、バントの時も刺せる時は封殺を狙う等、投球以外にも目を向けて鍛え上げてきたのが分かる。スクイズを外すなど、観察力の高さも見られ、ただ投げるだけの投手ではなく、細かな技術を抜かりなく遂行出来る姿勢は評価出来る。
更新日時:2012.07.09
将来の可能性
2回戦以降に突如としてストレートのコントロールが悪化したのはフォーム技術の悪化と考える。左肩がギリギリ開かずに、体重移動が真っすぐに推進し、リリースすることが出来ていたが、2回戦以降では左肩の開きが早くなり、強引な外旋が見られた。また大会中に股関節を痛めてしまったようで、股関節に力が入らずに、軸足の折り曲げが上手く出来ずに突っ込んだフォームにつながってしまったのではないだろうか。 股関節は無理をせず、完治しない状態でだましだましで投げてしまうと、最悪肘、肩に負担をかけてしまうので慎重に扱ってほしい所。実際にプロ野球では股関節を痛めていて、急ピッチで合わせていた投手が下半身を使えないフォームで、肘を痛めてしまい、1年間棒を振ってしまう事例があっただけに、甘く見てはいけない。 夏までに股関節を完治させ、我々を安心させるような唸りを上げる速球を見せてくれることを期待したい。
更新日時:2012.07.09
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