土浦日大vs霞ヶ浦
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4番・吉次の復活弾で土浦日大が霞ヶ浦破り4強入り
本塁打を打った吉次悠真(土浦日大)
茨城県大会は、9月に県の緊急事態宣言の影響により部活動が全面禁止。それにより大会が大幅に遅れ、10月19日でようやく県大会準々決勝というスケジュールとなった。その後、1日おいての21日が準決勝、さらに1日あいた23日の土曜日が決勝。その1週間後が関東大会と、なかなかタイトなスケジュールとなった。
ひたちなか球場の第1試合は、霞ヶ浦と土浦日大と県南地区の強豪同士の対決となった。
試合は両先発が安打を打たれながらも粘り強い投球を見せる。土浦日大の先発・山田奏太はゆったりと左足を上げて、右スリークォーター気味に腕を振っていき、常時120キロ後半〜133キロの直球、スライダー、カーブをテンポよく投げ分ける。ヒットを打たれながらも、粘り強く抑える。
霞ヶ浦の先発・山田大河。秋の段階では非の打ち所がないというぐらい完成された左腕だ。ストレートは常時125キロ〜130キロほど。だが、内外角へのコントロールが安定し、110キロ前後のスライダー、チェンジアップの精度が抜群。特に右打者の外角へ落ちるチェンジアップと内角へ厳しく投げ込むストレートのコンビネーションが素晴らしく、変化球はすべて膝下に決まり、甘いボールがほとんどないので、打ちようがない。
一瞬のスキを逃さなかったのが、土浦日大の4番・吉次悠真だった。4回裏、右中間へ大きく伸び、バックスクリーン横に飛び込む特大ホームラン。これが決勝点となった。狙ったのはストレートだった。
「コースは外角高め。打てるのはあれしかなかったです。自分はライト方向に打球が伸びるのが特徴なので、結構いけるかなと思ったのですが、まさか入るとは思わなかったです」
県大会では不調が続いたが、久しぶりの本塁打に「歓声で本塁打と分かって、今まで打てていなかったので、嬉しさのあまり泣きそうになりました(笑)」と振り返る。
高校通算5本塁打目となった。ただ吉次の安打はこのホームランだけ。それ以降は見逃し三振、空振り三振。山田の老獪な投球の前に苦しみ、「本当に凄い曲がりを見せる投手でした」と土浦日大打線は8三振を奪われたように、最後まで苦しんだだけに大きな一発だった。
驚異的なパワーを見せた吉次。気になるのは、ステップだ。予め左足を伸ばしたノーステップ。これは小菅監督の勧めで始めたものだ。
「体が突っ込んでしまい、変化球がうまく見えない状態が続いていました。監督さんの言葉を信じて、良かったと思います」
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完封勝利を挙げた山田奏太(土浦日大)
まだ確実性を欠けるが、右中間に本塁打を打てる点については魅力的。ただ打撃以上に良いのが守備だ。お世辞抜きに全国クラスの外野手だといえる。シートノックからダイレクト返球を投げこみ、守備範囲は非常に広く、俊足を武器に落下地点にすぐ追いつく。3回表、3番・木村優人が放った左中間の打球を追いついたのは驚かされた。この場面について吉次は「打った瞬間、左中間へ打つのがわかりましたので、風もあるので伸びるかなと思いました。ただ自分が思っているほど伸びなかったので、追いつくことができました」。
あっさりと追いついているが、普通の高校生ならば抜けてもおかしくない当たりも追いついてしまうので、土浦日大の山田奏は「吉次ならば、追いつくと思っていたので、驚きはなかったです。茨城県で一番上手い外野手だと思っています」と信頼を寄せる。また吉次も「茨城県では外野守備は自分が一番上手いと思っています」と自負する。
これほど走れて守れて、本塁打も打てる外野手もなかなかいないので、人気選手になるのではないだろうか。コンスタントに打てることを期待したい。
試合は土浦日大の山田奏が5安打完封勝利を挙げた。光ったのが内外野の守備である。小菅監督は「今年の選手たちは一生懸命やりますし、その中で守備力が高い選手たち」と表するように、内野手はステップ、ボール回しを見ていても素早く、ヒット性の打球を何度も阻止し、アウトにできる守備力の高さもある。外野手も吉次を中心に守備範囲が広く、スローイングも良い選手が多い。
今回の関東大会は出場3校なので、3位決定戦or決勝戦まで残ることが決定。これからも挑戦者の姿勢を忘れずに勝ち取っていく。
(取材=河嶋 宗一)
先発・山田奏太(土浦日大)
二塁に到達した太刀川(土浦日大)
第1試合スコア