試合レポート

聖パウロ学園vs都立片倉

2020.07.26

聖パウロ学園 大型右腕・村上、主砲・眞野が躍動!都立片倉は自慢の強力打線が奮わず完封負け

聖パウロ学園vs都立片倉 | 高校野球ドットコム
片倉 大西

 長い梅雨による影響で、26日の時点で東京都は初戦を迎えるチームが多い。都立片倉vs聖パウロ学園と八王子市の実力校同士の一戦は1点を争う攻防となった。

 5回終わって0対0。お互い無得点だが、両チームのカラーは対照的だった。都立片倉は高校通算20本塁打を超える4番清水謙伍を中心に強打者がそろう。清水だけではなく、体格的にがっしりとした選手が多く、ボールを手元まで呼び込んでフルスイングする選手が多く、1つ1つの打球が速い。

 都立片倉の宮本監督によると練習試合では連日の快打。好投手相手にも打ち崩しているというのも理解できる。

 一方、聖パウロ学園は内外野の守備が堅い。内野手、外野手ともに声をかけあって、しっかりと連携し、打球を処理。何度も初戦が延びながらも地に足がついた守備ができていた。

 また2回表には一死三塁のピンチでスクイズを読み切ってピンチを阻止するなど冷静な守りが光る。特に2回裏のスクイズ失敗は、聖パウロ学園の先発・村上大樹も、都立片倉の宮本秀樹監督も「大きかった」と語るように、この試合を投手戦に傾けさせる一場面だった。もし都立片倉の強打を発揮できていれば試合展開は大きく異なっていたかもしれない。

 都立片倉の先発・大西和輝は、ストレートのスピードは110キロ前半の速球とスライダーを駆使して、打たせてとる投球を見せる左腕。5回までパーフェクト、7回に内野安打を与えるまでヒットは1本も許さなかった。

 宮本監督によるとそれほど球速表示はあるわけではないが、手元でピュッと切れる球質で、さらにテンポも良く、打たせてとっていく。大西はこの冬場で、フォームの見直しを行い、自身のスマホの動画でフォームを撮影するなど、微調整を行った。

 その結果、大西は一塁側に倒れ気味だった体重移動を改善するために右足を挙げた時に軸足にしっかりと体重を乗せて、ホーム方向へ並進ができることを心掛けた。その理想の状態に近づくとコントロールも大きく改善した。かなり細身ではあるが、大学野球継続希望で、しっかりと体づくりを行い、ストレートの威力も上がってくれば、大学球界でも技巧派左腕として活躍できるかもしれない。


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聖パウロ学園 眞野

 試合の均衡が破れたのは8回表。ここまで聖パウロ学園はここまで好投の村上大樹がレフトスタンドへ先制本塁打。1点を先制する。そして8回裏から1時間ほどの中断があり、9回表、聖パウロ学園は1番・深澤龍士が安打で出塁し、2番野口陸斗の犠打で都立片倉の守備陣が乱れ、1点を追加。そして決め手は4番で主砲の眞野寛太がライトスタンドへ2ランを放ち、4対0と大きく突き放しに成功した。眞野は聖パウロ学園の中でも最も長打が期待できる逸材。スイングそのものも鋭く、打席の中でも集中力の高さを感じさせる。勝俣監督も「取り組む姿勢が素晴らしく、チームメイトのだれもが認める選手。一番速くきて、一番遅く帰るほど熱心に取り組みます。だから彼が打ったことでチームが落ち着きましたね。私も落ち着きました」と4番の一打で勢いに乗った聖パウロ学園

 そして9回裏、村上は強打の都立片倉打線を5安打完封勝利。実力校対決を制して初戦突破を果たした。

 雨の中でも盤石の守りを見せた聖パウロ学園。大会前から今年は雨の中での試合が多くなることを想定して、無理のない範囲で雨の日でも練習を行い、準備をしてきた。それがこの試合で大きく生きた。攻守ともにかみ合った試合で内容のある勝利だといえるだろう。

 敗れた都立片倉は1回戦で消えるのがもったいないチーム。特に2安打を放った4番清水はいずれもヒット性の当たりを放っており、強烈な打球を打ち返す清水に備えてセカンドがかなり後方に敷く選手だった。高校通算20本塁打を超えるスラッガーで、守備も、守備範囲が広く、左中間へ深い打球を追いついてアウトにした場面があり、能力としてかなり高いレベルにある。

 また二塁手の山本拓実はまだ2年生ながら守備力は一級品。前方の打球に対し、素早い持ち替えからジャンピングスローでアウトにしたり、一、二塁間の打球に追いついてアウトにするなど、その守備センスは素晴らしいものがあり、あとは打撃面がしっかりとレベルアップできれば、大学野球継続も可能な逸材だった。

(記事=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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