試合レポート

都立雪谷vs都立目黒

2011.09.26

都立雪谷vs都立目黒 | 高校野球ドットコム

山下(都立雪谷)

チーム力の重要性を再確認した雪谷が目黒をコールドで下し本大会進出

東京本大会出場をかけたブロック予選も今日で最終日を迎える。本来ならば24日まで全ての代表が決定する予定だったが、第19ブロックのみ当番校の修徳高校がグラウンドの事情により使用できず今日に延期となった。

第1試合は都立雪谷都立目黒の対決。
雪谷は03年夏に甲子園出場。09年夏には東東京大会決勝に進出。10年は4回戦で関東一に0-2で惜敗、11年は3回戦で同じく関東一に2-3と惜敗に終わったが、すっかりと都立の強豪として盛り返している。新チームではどんなチームを作り上げているか注目してみた。

都立雪谷は2回裏に7番原の右中間を破る三塁打。8番土谷の右中間を破る二塁打で1点を先制。さらに1番渕山の適時打で1点を加え2対0とする。都立目黒は3回の表に9番北川が二塁打で出塁。無死から得点圏にランナーを出したが、無得点に終わった。都立雪谷の相原監督はこの3回の表を0点に抑えたことをキーポイントに挙げた。

「勝負のアヤといいますか。もし3回の表に点が取られていればもう少しもつれた展開になっていたかもしれません」

ピンチを切り抜けたことで徐々に自分たちのリズムを取り戻してきたのか。4回裏、都立雪谷は9番桑原和の中犠飛で1点を加え、さらに5回裏には4番田中のレフトスタンドへ飛び込むツーラン。4番の一発でチームは勢いづいて、やや硬さが見られた雪谷ナインの緊張がほぐれ、表情も良くなっていた。山下、桑原佑の継投でつないでいき、7回裏、都立目黒の二番手・半田から原の三塁強襲安打でサヨナラ。都立雪谷がコールドで都大会出場を決めた。


都立雪谷vs都立目黒 | 高校野球ドットコム

本塁打を打った田中を迎えるナイン(都雪谷)

 都立雪谷が強い都立でいられる条件。
それはチーム力を常に高める努力をしていることだ。相原監督が説明する。
都立雪谷は部員全員が団結し、チーム力を高めて勝負していくチームです。甲子園に出場したチームもそうだった。スター選手が集まるチームではないだけにチーム力を高めていくことはうちだけではなく、都立高校に共通することだと思います」

だがここ2年、前チームの戸津由博に頼る状況であった。昨年は関東一に2失点、今年も関東一に3失点。強豪校に対して最小失点で凌げるエースが存在するのは人材が集まりにくい都立高校にとっては貴重な存在であっただろう。戸津が引退してからの新チームは何もないチームだった。

夏場は多くの練習試合を重ねていき、核となる選手を見出した。新チームのエースに抜擢されたのは1年生の山下だった。1年生とは思えない立派な体格をしている山下だが、相原監督に言わせれば「中学時代には本格的に野球を教わっていない。教わる課題が多すぎる選手」と評する。確かに投球フォームは荒削り。足を捻り、腕をぶん回すフォームは中学時代から本格的に指導されてきた投手ではないことが容易に分かる。むしろ二番手で登板した桑原佑が垢抜けたフォームをしていて、投手らしい投手だ。

125キロ前後の速球と切れの良いスライダーを投じ、マウンド上の安定感もある。

それでも山下をエースに抜擢する理由は2つある。一つ目は夏の練習試合で強豪校と試合を行い失点が少なかったのは山下であった。2つ目は将来の主力選手として育てることだ。彼は3番に座るが、当たりはなかったものの、体格も良く、技術が合わされば持ち前のパワーを活かすことが出来るのだろう。今のパフォーマンスを度外視してでも、主力選手に育て上げたいと思っている。投手としても未完成ながら7回途中まで無失点に抑えるのは収穫であっただろう。

山下だけではなく、1番の渕山は2安打。リストワークが巧く、逆方向に打ち返せる打撃センスは魅力的。夏からベンチ入りしていた2番館越も2安打を記録。二人とも1年生で相原監督期待の1年生だ。ファーストを守る李は長身の一塁手。190センチを超えそうな体格にはひときわ際立つものがあり、最も長打力がある打者。しかし確実性に欠き、5番に甘んじている。彼が開花すると都立雪谷打線に厚みが増していくだろう。

未完成の選手たちを束ねるのが正捕手の田中。1年夏からマスクを被り、経験に裏打ちされたリードセンス、安定したキャッチング、強肩で投手を支える。投手陣がここまで抑えることが出来ているのは田中の存在は見逃せない。この試合でも本塁打を打ち、主力選手としての成長を見せてきている。

大エース・戸津が引退してから都立雪谷の選手たちは「自分たちがやらなければならない」という自覚が芽生え、都立雪谷は改めてチーム力で勝負するチームであることを再確認したのではないだろうか。本大会は欲を出さず目の前の戦いを全力で戦い抜き、再び強いチームに成長させるきっかけを掴むつもりだ。

(文=編集部:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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