試合レポート

東海大菅生vs海城

2021.10.10

東海大菅生vs海城 | 高校野球ドットコムこの試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています

東海大菅生エース鈴木が復活、春季大会ぶりの公式戦マウンドで手ごたえ

東海大菅生vs海城 | 高校野球ドットコム
激走する東海大菅生・酒井成真

 3季連続甲子園を目指す東海大菅生が、2回戦で海城と対決。旧チームの経験者が多く残るだけに、普段通り戦えば有利だと考えられたが、出鼻をくじかれる形になった。

 先発した豊岡 遥翔が一死から四球でランナーを出すと、3番・岸 凛太朗と4番・亀徳 正純の連打でいきなり満塁とピンチを招く。するとここで5番・三浦 遼大にライト前にはじき返され、2人のランナーが生還。2点を追いかける展開になる。

 ただ海城先発・小谷 新太の制球が安定せず、直後の攻撃で一死二、三塁とチャンスを作ると、4番・小池 祐吏の犠牲フライで1点を返す。さらに7番・酒井 成真が1ストライクから左中間を深々と破る三塁打で4対2とすぐさま逆転に成功する。

 リードした東海大菅生は、2回からは2番手・島袋 俐輝が登板。ストライク先行のテンポの良い投球で守備を落ち着かせると、打線は毎回得点で、4回までに9対2とリードを広げた。

 すると、「もっと後ろの予定でしたが、コールドになるかもしれない」と若林監督が判断して、エース・鈴木 泰成がマウンドへ。春季都大会以来の公式戦登板だったが、鈴木は真っすぐだけで海城打線を圧倒。まともに打球を前に飛ばさせないピッチングで雰囲気を変えた。

 それに感化されてか、直後の攻撃で、得点を重ねていき、最後は2番・福原 聖矢主将のホームランでゲームセット。13対2の5回コールドで勝利した。

 初回に2点を失うものの、終わってみれば5回コールド勝ちで3回戦進出を決めた東海大菅生。この一戦ではエース・鈴木の復帰登板はもちろんだが、新戦力の台頭も目覚ましいものだった。

 投手陣では2番手に登板した背番号14・島袋が、試合のリズムを立て直し、「攻撃に集中することができた」と若林監督も好投を労った。
 インステップ気味だが、全身を使って連動性のあるフォームから角度を付けた真っすぐ。そこに縦のスライダーを織り交ぜた安定感溢れる投球が光った。ゲームメイクに長けた投手という印象を受けた。

 野手では7番に座った酒井が2安打、3打点とアピールした。
 オープンスタンスにして、しっかりピッチャーが見えるように構えると、ゆっくりとした動きで、左足を着地させる。自分の間合いでボールを見極めることができており、非常に雰囲気がある。

 リストの強さや、3回にエンドランを決める器用さもある。7番にいるのがもったいないと思われるが、「ポテンシャルはクリーンナップを任せることができるので、当たり前です」と若林監督は評価が厳しい。ただ、「彼が機能すると打線に厚みが出てきますね」と厳しかったのは、期待の裏返しから来ているものだった。

 3回戦以降も、2人をはじめ新戦力の活躍が非常に楽しみだ。

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東海大菅生・鈴木泰成

 そしてこの試合、大きな注目を集めたのが、5回に登板したエース・鈴木だ。
 1回投げて2奪三振、全球ストレート勝負だったが、明らかにそれまで投げていた3投手より走っているのがわかる。

 海城の梶監督は「(他の投手に比べて)伸びのある真っすぐでした」と話せば、亀徳主将は打席に立つことはなかったが、「わかっていても打てない。仕留めきれないボールのキレ、伸びがある」とチームメイトたちが話していたという。

 相手も驚くストレートの威力で圧倒した鈴木は、対外試合の感覚は空いていた。公式戦では春季都大会以来、練習試合でも9月下旬あたりからと、ケガの完治に専念したことで、約半年のブランクがあった。鈴木は空白の期間にフォーム改善に取り組んだ。

 ポイントにしたのは2つ。
・インステップ
・左腕
 この2つを改善することに努めてきたという。

「体が一塁側に流れやすい癖があったので、ケガの期間は鏡の前や動画を取ってもらいながらシャドーをしてきました。その時に、しっかりと真っすぐ踏み出せるか。あとは身体が流れるのを防ぐために、右わき下にグラブをおさめることができるか。ここをチェックするようにしました」

 これらを覚えたことで制球力の向上に繋がったと手ごたえを感じている。

 鈴木にとって、今はどれだけ開きを抑えて投げることができるのか。そこがピッチングにおけるバローメーターだと考えられる。実際、この試合でも一塁側に流れることでボールが浮いてしまったことを反省しており、フォームの開きを気にしているようだった。

 とはいえ、この試合では真っすぐだ。変化球は使わずして堂々たる投球で、球場の雰囲気を変えた。「感覚的には良かった」と納得していると、若林監督も「良かったんじゃないですか」とエースの公式戦復帰登板を評価していた。

「全員が揃ったといいますか、どこが相手もがっぷり四つで勝負できると思います」とエースの合流で、準備は整ったようだ。その鈴木も「先発でも抑えでも、自分の投球で流れを変えられるようにしたい」と意気込みを語った。

 エースの復帰で、大会連覇へまた一歩前進した東海大菅生。3回戦以降はどんな野球を見せるか楽しみだ。

(記事=田中 裕毅


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ホームランを放った福原聖矢(東海大菅生)
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円陣組む東海大菅生
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点数が入り、歓喜する海城ベンチ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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