試合レポート

神村学園vs隼人工

2021.09.25

「緊張感」を作り出す・神村学園

神村学園vs隼人工 | 高校野球ドットコム
神村学園・川井

 当初開幕は20日の予定だったが、鹿児島市内がコロナのまん延防止等重点措置地域に指定されているため5日遅れての開幕だった。球場に入れるのは今のところ、部員と学校関係者のみ。閑散とした中、どのチームも実戦経験を積めないまま、手探り状態で新チーム最初の公式戦を迎えた。

 立ち上がり、隼人工は2番・福園颯汰(2年)の内野安打、4番・本村仁(2年)がライト前ヒットを放ち、相手の送球エラーで二死二、三塁と絶好の先制機を作ったが、得点ならず。

 その裏、神村学園は4番・田中拓真(2年)のレフト前タイムリー、5番・富﨑大都(2年)のライト前2点タイムリーで計3点を先取する。

 2回裏は二死三塁から3番・福田将大(2年)がセンターオーバーのランニングホームランで2点を加えた。4回は2ランスクイズを決めるなど果敢に足を絡めて、3安打で4点を奪って大きく主導権を手繰り寄せた。

 2回以降は先発の川井燿(2年)、内堀遼汰(2年)、朝吹拓海(2年)とつないでテンポ良く打ち取り、5回裏は4番・田中の左中間二塁打で10点差としてコールド勝ちを決めた。

 「チームで野球をやる。今、やるべきプレーに集中できるか」(小田大介監督)。神村学園がこの試合で課したテーマ。キャッチボールをしっかりやる、守備でリズムを作る、低めのボールに手を出さず、ゾーンを上げて甘い球を逃さない…守備でも攻撃でも、勝利のためにそれぞれがやるべきプレーができているか、確かめながら緊張感のある戦いを繰り広げた。

 5回コールドと一方的に勝ったようには見える。ただ詳細を振り返れば、初回は不用意なエラーがあった。簡単に二盗は決めたが、暴投を見逃して先の塁に進めなかった選手がいた。ランナー二塁からワンヒットで生還を目指すも、判断が甘く、中途半端に三本間で挟まれてアウトになった場面もあった。

 不用意なミスがあれば、容赦なく選手を入れ替えた。スタメン通りの打順、ポジションだったのは4番・ライトの田中と5番・キャッチャーの富﨑のみ。15人の選手を使い、1番・宮本大輝(1年)はセンター、レフト、サードと3つのポジションをこなした。いろんな選手の適性を試すと同時に「自分たちで緊張感を作り出す」(小田監督)という狙いがあった。

 緊張感のある中でプレーができなければ、ステージの上がった準々決勝、準決勝、決勝はとうてい戦えない。甲子園など夢のまた夢。コロナの影響で対外試合もほとんど詰めていないならば、公式戦こそがチームを成長させる絶好の機会だ。

 だからこそ、点差や相手に関係なく、プレッシャーを自分たちでかけて追い込んでいく。球場が閑散としていた分、ベンチの小田監督の厳しい声はより大きく響いた。

 「プレッシャーを楽しめというけど、それは無理な話。だったらプレッシャーのかかる状況の中でもプレーできるようになることが大事なんです」と小田監督は力説する。例年に比べて前チームの経験者も少なく、厳しい声もいつも以上だが「叱りがいがありますよ」と、その伸びしろへの期待の大きさもうかがえた。

 選手宣誓では「当たり前に野球ができること、支えてくれた人たちへの感謝」のメッセージを込めた中村駿汰主将。「私生活からもう一度見直し、一戦一戦成長して、甲子園に行く」気持ちを新たにしていた。

(取材=政 純一郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

U-18代表候補・西尾海純(長崎日大)、甲子園で活躍する幼馴染にむき出しのライバル心「髙尾響には負けたくない」

2024.05.16

【秋田】秋田修英と秋田工が8強入り、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?