試合レポート

安城東vs名古屋工

2019.07.21

テンポのいい投手戦、安城東が少ない好機を巧みに攻めて快勝

 6月末の土日に開幕した愛知大会。今年は雨にも悩まされながらも、予備日なども余裕をもって確保していたこともあって、ここへ来て4回戦は日程通りの開催となった。

 188チームが出場して全国一の激戦区となっていた愛知大会だが、この日から本格的な夏休みに入るというこの段階で、早くも32チームに絞られている。8校あったシード校も初戦の3回戦で3校がすでに姿を消している。その一つである春季県大会準優勝の愛知黎明をコールドゲームで下したのが名古屋工だ。

 そんな勢いに乗っている名古屋工に対して、3回戦では緊迫の延長戦をタイブレークの末に1対0で制してきた安城東がどのように戦っていくのか…。名古屋工打線対安城東の河合君という対決が見どころかと思われた。結果としては、変則気味の左腕河合君が投げ勝ったと言っていいであろう。

 河合君は右足をピンと後ろに跳ね上げて振り子のように前に戻してから踏み出す、振り子打法ならぬ振り子投法とでも言おうか。そんな独特の左スリークォーターのフォーム。そして、追い込んだ場合は、時にほとんど足を上げないで、クイックスローのようにして投げていく。これが、見事にハマった形で4安打完封という内容で、大見健郎監督も「今日は100点を挙げてもいい内容」と評価するくらいの出来だった。

 このフォームに関して大見監督は、「元々、あんな投げ方だったのだけれども、とにかく球が遅いものだから、それならばいろんな投げ方を工夫してみようと、足の上げ方などは研究していたみたいです。左なので、インステップしてしまう癖は、それでも抑えられているのならばそれでいいじゃないかと思っています。変則だけれども、ほとんど肩を壊したり痛いということもないので、いいのではないでしょうか」と、試行錯誤の末の成果だという。


 試合は5回を終わった時点で45分というスピーディーな展開だった。ただ、ここまで安城東は9番都築君のバント安打1本のみ。名古屋工も7番三浦君の右前打と2番池田君の左翼二塁打のみだった。しかも、池田君はけん制で刺され、ここまでお互いに残塁1ずつという内容だった。

 こうなると、試合は膠着してしまいかねないところなのだが6回、ここまで好投してきた名古屋工の三浦君が突如として制球を崩して連続ストレート四球を出してしまう。そして1番稲垣君が左前打して無死満塁。一死後3番大見進貴君が中犠飛で安城東が先制。さらに、4番木村君も中前打して三盗して進んでいた都築君を帰して2点目を追加した。
 8回にも安城東は1番からの好打順で、稲垣君が右越二塁打すると、中村君のバントが安打になって一、三塁。ここでまたも大見君が犠飛を放って3点目。さらに二死二、三塁となって、5番奥田君が右前へはじき返して4点目。安城東は、必ずしも好機が多かったというものではなかったが、そこできっちりと得点できたことが大きかった。

 会心の勝利と言ってもいい試合に大見監督も、「まさか、このチームで5回戦まで残れるとは思いませんでした」と言いつつも、「エースがしっかり投げて、1番がコンスタントに出てクリーンアップが帰して得点という、申し分ない試合でした」と十分に満足した笑顔だった。
 名古屋工としては、愛知黎明に勝った勢いで向いたいところだったが、何となく消化不良のような形の試合になってしまったのではないだろうか。それでも、三浦君は4点を失いつつも終始自分の投球は出来ていたのではないだろうか。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

【秋田】秋田修英と秋田工が8強入り、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.05.16

【秋田】夏のシードをかけた3回戦がスタート、16日は大館鳳鳴などが挑む<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?