試合レポート

横浜vs花咲徳栄

2018.08.15

花咲徳栄の夏連覇の夢を打ち砕く!4回に一挙6点で横浜が16強!

横浜vs花咲徳栄 | 高校野球ドットコム

 チームの格から見れば「関東最強決定戦」と言ってもいい。この好カードの序盤から中盤にかけて一方的に押したのは横浜だった。花咲徳栄の先発、野村佑希(3年)は1回戦にくらべたらストレートに速さがあったが、中途半端な速さは横浜にとっては〝好物″以外の何物でもない。

 3回表、四球で出塁した走者を二塁に置いて2番・河原木皇太(3年)がレフト前に運んでまず先制。4回は先頭の5番・内海貴斗(2年)の二塁打が口火を切り、6番・角田康生(3年)、7番・長南有航(3年)の連打にエラーが絡み、9番・遠藤圭吾(3年)の2点タイムリー、さらに上位打線にもつながり河原木の2点タイムリーなどで大量6点を入れた。6回にも3番・齊藤大輝(3年)の二塁打で1点を加え8対1となり、地方大会ならコールドゲーム目前という試合展開。まさか終盤にもつれるとは思わなかった。

 この展開を演出したのは花咲徳栄のリリーフ陣と言っていい。4回途中から登板した中田優斗(3年)は昨年の優勝に大きく貢献した清水達也(中日)によく似た投球フォームから最速145キロのストレートを投げ、5回を1失点に抑えた。中田の好投がなければ試合は一方的な展開になり、終盤のもつれも呼ばなかったに違いない。そして、9回をノーヒットに抑えた松井颯(3年)もストレートが最速141キロを計測し、コントロールも安定していた。それならばどうして野村をもっと早く降板させなかったのか。疑問はどうしてもそこに行き着いてしまう。

 横浜打線は放った11安打のち、1番から5番までが6本、6番から9番までが5本とバランスがよかった。この中でもとくに目を引いたのが5番の内海だ。ゆったりと始動して暗闇の中で道を探るような慎重さでステップするというバッティングの奥義を横浜打線の中で完璧に実践していたのが内海だった。

 花咲徳栄で目立ったのは4番の野村だ。1回戦の鳴門戦中のこと。私の後ろの通路で2人のスカウトが野村のことを熱心に語り合い、1人は「ピッチャーなんかやってるからバッターに集中できないんだ」と言っていたが、私も深く同意した。もう1人は「凡打とホームランは紙一重の差なんだ」と言い、身振り手振りでボールにバットが入る角度を示していたが、この2人の野村に対する〝肯定的な空気″は何ごとかと思った。まるでドラフト1位選手を評価するような空気が醸成されていたのだ。野村は藤原恭大根尾昂(ともに大阪桐蔭)や小園海斗(報徳学園)のようにマスコミで名前が挙がらないが、スカウトの評価は高いんだなと思った。

 この野村が6回に2ラン、7回には1番・橋本吏功(2年)がソロホームランを放ち、8対4で迎えた9回裏には先頭の9番打者が死球で出塁すると1番、3番が四球で続き1死満塁。この場面で野村が三塁内野安打で1点返し、試合の行方は俄然わからなくなった。

 なおも満塁の場面で5番・羽佐田光希(2年)の3球目は死球と思ったが球審はよけていないと身振りで示しボールのジャッジ、6番の倉持賢太(3年)の3球目は逆にハーフスイングと思った球が死球とジャッジされ、球場内は混迷の度合いを深めていった。

 8対6で2死満塁、さらに強い風がライトからレフトに吹いているのを見て、井上朋也(1年)にホームランが出ればサヨナラだと思ったが、3ボール2ストライクからの6球目のスライダーを空振りしてゲームセット。今大会はこんな小説もどきの試合が多いが、私も含めた観客は大喜び。ああ、本当に面白かった。

(記事=文:小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.10

【香川】昨夏甲子園Vの慶應義塾を招待!春4強が迎え撃つ<招待試合>

2024.05.10

【宮城】5大会連続V狙う仙台育英は名取北と白石工の勝者と対戦、東北とは同ブロック<春季大会組み合わせ>

2024.05.09

【新潟】日本文理、開志学園、帝京長岡、関根学園が4強<春季県大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【関東】山梨学院と常総学院がそれぞれ優勝、出場校の対戦が確定<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>