試合レポート

日大三vs桐光学園

2018.05.19

日大三、打線不調も、強力投手陣でカバーし、桐光学園を破る!

日大三vs桐光学園 | 高校野球ドットコム
力投を見せる中村奎太(日大三)

 日大三(東京1位)と桐光学園(神奈川2位)の一戦は花咲徳栄vs専大松戸の打撃戦からは一転して、ロースコアの接戦となった。

 先制したのは桐光学園。3回裏、一死二塁から1番鈴木智也(2年)の二塁内野安打と敵失で1点を先制すると、さらに日大三に守備のミスがあり、2点目を入れる。

 桐光学園の先発・谷村然は、右スリークォーターで勝負する右投手。常時130キロ中盤(最速138キロ)のストレート、125キロ前後のスライダー、110キロ前後のカーブを内外角に投げ分け打たせて取る投球を見せ、4回まで無失点に抑える投球を見せる。

 追う日大三は一死一塁から8番佐藤コビィがライトフェンス直撃の適時三塁打を放ち1点を返すと、9番佐藤英雄(2年)の適時打で2対2の同点に追いつく。

 日大三のエース・中村奎太(3年)も力投。2年春からデビューした右投手だが、だいぶ体つきも逞しくなり、特に腰回りが太くなった。

 フォーム一連の流れも良くなり、大きくレベルアップを見せた。右スリークォーターから投じる直球は常時135キロ~140キロ前半(最速142キロ)のストレートを厳しいコースへしっかりと投げ込む。走者を背負うとギアを上げて140キロを連発。120キロ後半のスライダ、フォークも低めへ決め、安定したピッチングを見せ、6回裏、7番谷村の場面で全力ストレートで三振。この試合最速の145キロを計測し、力のあるピッチングを見せた。

日大三は7回裏から左腕の河村唯人(3年)が登板。河村はグラブを持った右腕をすぐに右胸に抱え込んで、ぶん回すように腕を振るオーバーハンド。常時135キロ~140キロを計測し、中村よりも重量感たっぷりのストレートと、120キロ台のスライダーのコンビネーションで、2回3奪三振無失点の好投を見せる。


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キレのある変化球を披露する富田冬馬(桐光学園)

 また桐光学園は8回表から左腕・富田冬馬(2年)が登板。先輩・松井裕樹(東北楽天)とフォームが似ているということで、リトル松井裕樹と呼ばれるが、昨年と比べると体格面の成長が見える。富田は体の近くで腕が振れるフォームであること。外回りをせず、肘が立ったフォームなので、体の軸のブレが小さい。指先にしっかりと力が伝わったストレートを投げることができており、常時130キロ中盤~136キロのストレートは去年よりも威力が上がっており、120キロ前後の縦スライダーは、一度浮き上がってから手元で急激に落ちるような軌道を描く変化球で、日大三の打者は見送るか、空振りをするしかない。少しずつレベルアップを見せている。

 日大三は9回裏、3番手に189センチの大型右腕・廣澤優(2年)を送りこむ。この春先から登板が増えてきた投手だが、マウンドに立った時の威圧感がすさまじい。真っ向から振り下ろす投球フォームは右の金成麗生(18年卒・現トヨタ自動車)と説明すればイメージがしやすいだろう。

 常時140キロ~145キロのストレートは威力十分。9回裏には143キロを3球、145キロを2球計測しており、速球能力は同じ2年生の井上広輝(2年)にひけをとらない。125キロ前後のスライダー、130キロ前後のフォーク、120キロ前後のチェンジアップといずれも精度は高い。特にチェンジアップは強い腕の振りからうまく抜けて落ちるので、打者はストレートと錯覚して、前のめりになった形での空振りが相次いだ。まだ粗削りな速球派だが、持っているモノは素晴らしい逸材だ。

 富田、廣澤の両投手が抑えて、試合は延長戦に突入する。
 10回表、日大三は二死二、三塁から4番大塚晃平(3年)が三塁手の横をわずかに抜ける左前適時打で二者生還。さらに5番飯村昇大(3年)の中前適時打で5対2と突き放しに成功する。

 10回裏、廣澤は4番山田 陸人(3年)に二塁打を打たれ、1点を失うが、後続を抑え、2回戦進出を決めた。

 日大三は自慢の強力打線が低調だったが、投手陣が踏ん張った。登板した3投手はすべて140キロを超え、うち2人は145キロを計測するというハイレベルぶり。これまで潜在能力は高くてもなかなか実力を発揮できなかったことが多かったが、神宮、選抜、東京都大会の厳しい戦いを経験したことが、実力を発揮できるようになっているのだろう。次戦以降の日大三投手陣の投球にも注目をしていきたい。

 桐光学園は県外での1勝が遠い。守備、走塁、打撃、投球は鍛えられており、「洗練」という二文字が似合う強豪だ。ただここぞという場面で、打撃、守備でミスが目立つ。そこを乗り越えることが6年ぶりの甲子園出場のカギとなるだろう。

(文・写真=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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