花咲徳栄vs専大松戸
5本塁打が飛び出した空中戦!花咲徳栄が土壇場の粘りを発揮し、逆転勝利!
3ランを放った昆野(専大松戸)
5月19日、春季関東大会が開幕した。[stadium]千葉県野球場[/stadium]の第1試合は花咲徳栄(埼玉2位)vs専大松戸(千葉3位)の対決だ。お互い攻撃力が高く、絶対的なエースがおらず投手力に不安を抱えているところは共通している。試合は両チームの打撃力が発揮され、5本の本塁打が乱れ飛ぶ空中戦となった。
1回表、花咲徳栄はいきなり無死満塁のチャンス。ここで高校通算51本塁打のスラッガー・野村佑希を打席に迎える。野村は初球のスライダーを捉え、左前適時打で2点を先制。さらに敵失の間に1点を追加し、初回に3点を先制する。
だが専大松戸もすぐさま反撃。一死一、二塁から頼みの4番今里凌(3年)が痛烈な右前安打で一死満塁のチャンスを作り、5番尾川龍馬(3年)の二ゴロから1点を返す。さらに二死二、三塁から6番石川祐暉(3年)が中前適時打を打ち返し、同点に追いつく。2回裏、一死一、二塁からは3番昆野海翔(3年)がライトへ勝ち越し3ランを放ち、6対3と逆転に成功。
3回表、花咲徳栄は4番野村がライトへ本塁打を放ち、6対4と2点差に迫るが、4回裏、専大松戸は一死一、三塁から6番石川のスクイズが成功し、7対4と点差を広げた。しかし5回裏、花咲徳栄の4番野村が135キロのストレートを捉えて、痛烈な中前安打。二死一、二塁から6番倉持 賢太(3年)が適時打を放ち、5対7と2点差に迫り、前半を折り返す。
反撃したい花咲徳栄は7回表、ここまで3安打を打っている野村の第4打席を迎えた。ここで専大松戸は徹底した内角攻めを見せ、フルカウントからインコースのストレートで空振り三振に打ち取る。4番打者を打ちとり勢いに乗った専大松戸は、6番石川に本塁打が飛び出ると、8番横山にも本塁打が飛び出し、2点を追加。9対5と突き放した。
だが花咲徳栄は8回表に大反撃。無死一塁から、1年生ながらスタメンに入っている7番井上朋也(1年)が高めに入った136キロストレートを逃さず、レフトへ2点本塁打を放ち、9対7と再び2点差に。県大会で2本塁打を放ったスーパー1年生は鮮烈な関東デビューを飾った。
井上の良いところは常にフルスイングを心掛けていること。1年生で堂々と思い切り振れる選手はなかなかいない。そういうところが起用されている理由だといえる。180センチ80キロの恵まれた体格を生かす、無駄がなく、腰をきれいに回転させた豪快なスイングで驚異的な打球を生み出す。打者としての雰囲気、長打力という点では、過去の右のスラッガーの1年生時の実力と比べても上回っている。末恐ろしい1年生が出てきた。
勝ち越しの適時二塁打を放った倉持(花咲徳栄)
1年生の一打で勢いに乗った花咲徳栄打線はさらに一死満塁から3番韮澤雄也(2年)がライトへエンタイトルツーベースを放ち、同点に追いつく。そして二死満塁から、打者10人目の倉持が走者一掃の適時二塁打を放ち、12対9と3点をリード。
倉持はこれで4打点目。インパクトまで無駄のないスイングができており、コンタクト能力が高い右打ちのセカンド。守備力も深く、肩の強さに自信があるのか、定位置よりも後ろに守り、速い打球に対応できている。スナップスローも強く、高レベルな二塁手である。
さらに9回表、二死一、二塁から3番韮澤が右中間を破る適時二塁打を放ち、2点を追加。これで韮澤も4打点目。インパクトまで無駄のない、力強いスイングができている。韮澤は遊撃守備でも8回裏に、4番今里が打った三遊間への鋭い打球を逆シングルで追いつき、そのまま踏ん張ってスロー。なんとストライク送球でアウトにし、観客を沸かせた。花咲徳栄は例年、良いショートを輩出するが、韮澤は2年前にプロ入りした岡崎大輔(オリックス)と比較しても、そん色ない逸材といえるだろう。
投げては6回裏から登板している2番手・岩崎海斗(2年)が力投。7回裏に本塁打を2本浴びたが、4回を投げて2失点にとどめる好リリーフ。専大松戸打線を抑え、2回戦進出を決めた。
花咲徳栄は勝負所を逃さず、見事に逆転勝利。県大会で発揮してきた強打を関東の舞台でも披露した。
昨秋の関東大会では初戦敗退。それも逆転負け。そして今年の春の県大会決勝も逆転負けとレベルが高い試合では悔しい負けを経験してきた。その悔しさを糧に粘り強さを身に付けたといっていいだろう。次は選抜ベスト4の東海大相模相手にどんな野球を見せるのか。
敗れた専大松戸は自慢の打撃力をしっかりと発揮できた。ただ投手陣は終盤に崩れてしまい、大量失点。夏までの大きな宿題が見つかった。大量失点の8回の場面はどうすれば防ぐことができたのか?もう一度、その原因を検証し、夏に向かってほしい。
(文・写真=河嶋 宗一)