試合レポート

西尾東vs大府

2016.07.27

取って取られての競り合いは、9回に西尾東が長打で決着

 愛知大会ベスト8のうち、最終的に公立校は2校のみが残った。その2校が準々決勝で対決するという組み合わせとなった。皮肉という意見もあるが、4強に必ず1校公立校が残るという見方もある。いずれにしても、知多の大府と西三河の西尾東大府はかつて甲子園出場の実績もある。近いところでは08年の90回記念大会で出場を果たしている。

 一方西尾東は、4年前にも愛知大会で4強に進出するなど、このところ安定して上位に顔を出す存在となっている。中日の守護神として活躍した岩瀬仁紀投手の母校ということでも知られている。現役時代、その岩瀬の1年下にいたのが、現在の寺澤康明監督である。

 前日は、3回表で西尾東が2点リードしてなおも二死満塁という場面で雨天のため中断。そのままノーゲームとなってしまった。西尾東は前日、2回を投げたスピードのある川崎ライアン君ではなく、エースナンバーの神尾 明星君が先発マウンドとなった。

 この日も先制したのは西尾東で、しかも前日同様に2回表で、二塁打で出た4番三ツ矢君をバントで進めると、村野君が右犠飛で帰した。さらに4回は、前日に中断した時と同じようなシチュエーションで一死満塁となったが、ここは大府の浅野君が踏ん張って投ゴロ併殺で切り抜けた。そして大府も4回、鰐部君と舟橋君の連打で無死一三塁とし、二死二塁となってから、5番長谷坂君が一二塁間をしぶとく破って同点とした。

 ここから、試合は激しく動き出した。お互いの攻防、一つひとつのプレーに見ごたえがあった。


 6回、大府は先頭の2番鰐部君がバント安打と悪送球で無死二塁とすると舟橋君のバントで三塁へ進む。ここで西尾東の寺澤監督は投手の神尾君をセンターへ、センターの川崎君がマウンドへ入れ替えた。結局、内野ゴロで大府は同点に追いつくが、7回からは再び元のポジションに戻した。川崎君は、ショートリリーフの指示を受けての登板だったのか、140キロを超すストレートは前日の先発マウンドよりも威力があった。

 その7回、西尾東は7番からの打順だったが、吉田君と眞子(まなこ)君がともに粘って連続四球。眞子君は大喜びで一塁へ走って行った。すかさず送ると1番川崎君は、カウント1-1からスクイズを決めて西尾東は同点に追いつく。なおも二死三塁という場面で大杉君が二塁へしぶとく内野安打して三塁走者を帰してリードを奪った。

 しかしその裏、大府は二死走者なしから9番浅野君が左前打で出ると、1番の杉谷君は狙いすましたかのように、ライトスタンドへ運ぶ2ランで再逆転した。後半になって、激しく点を奪い合う展開となった。

 粘る西尾東は8回、先頭の3番神尾君が二塁打すると4番三ツ矢君があえてバントで進め、5番沓名君が中犠飛を放って西尾東はまたまた同点に追いついた。お互いが、今の段階で持てる力を出し切りながら、取って取られてという展開で、延長戦もあるかなという感じになってきた。一つのプレー判断で、試合がどう転がっていくのかわからない、そんな試合になっていった。

 9回の西尾東は7番からの打順で、四球はあったものの二死二塁となり、一番の川崎君はやや敬遠気味の四球で一二塁。続く大杉君はファウルしながら粘って四球を選んで満塁となった。大杉君の粘りの選球だったが、この時のムードは、何となく次の神尾君が打つのではないかという雰囲気があった。初球から思い切りよく振っていった神尾君、バックネットへのファウルの後の2球目、ジャストミートの打球は左翼頭上を破り、ライナーでフェンス直撃の二塁打となり2者が帰った。さらに、三ツ矢君も今度は左翼スタンドへ運んで決定的ともいえる3ランとなった。さすがに、1イニング5点は大府にも効いた。

 自身のバットでリードを作った神尾君はその裏、気持ちよくスイスイと投げて3人で抑えた。
注目の好投手浅野君と、野田雄仁監督が「これまでにないくらいに、強いリーダーシップを持った主将」と評価していた杉谷君がリードオフマンとしており、攻守の要がしっかりしていた大府。今年は野田監督としても確実に手ごたえを感じていた年だっただけに、落胆の色も隠せなかった。

 (文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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