大阪偕星学園vs鳳
初の甲子園を経験した後の難しい秋
岸頼大(大阪偕星学園)
8回コールドゲームで鳳を下した大阪偕星学園。試合中から、山本晳監督の表情は冴えなかった。「今は一から野球の基本を教えている段階です」。
初めての甲子園が終わり1ヵ月あまり。レギュラーで残ったのは主将となったショートの的場優斗(2年)と、5番を打っていた岸頼大(2年)の二人だけ。特に光田悠哉(3年)が2年間エースを務めていたこともあり、下級生の投手はこれから誰がエースになるのかという状況。この日は背番号13の福本凱斗(2年)が先発したが、7回途中からはショートの的場がリリーフした。「日替わりエースで、的場も経験はありません。光田、姫野(優也=3年)、三輪(晃大=3年)らがいたので、投げさせるチャンスがなかった」と話した指揮官。甲子園に初出場したことで新チームの練習試合があまり組めないということも初めて経験している。試合中の状況判断なども、本来なら8月の練習試合で叩きこむことができるのだが、新チームはまさに今叩きこんでいる最中というのも現状だ。
例えば6点差をつけていた7回表の場面。一死から送りバントで二塁に進め、3番・岸がセンター前へポテンヒットを放った。あと1点でコールドゲームに出来る状況を考えれば、二塁走者はこの打球で還れたはずだが。三塁ランナーコーチはストップを命じた。その瞬間、指揮官は「何のために送ったんだよ。もう、頼むよ!」と呆れた様子でランナーコーチを叱った。結局このイニングは得点できずに、その裏に2点を返された。指揮官は次の8回にもう一度一死から送りバントを指示して、同じ状況を作った。こういう状況判断はできれば夏場に少しでも多く経験して叩きこんでおきたい。
「大会期間中は追い込むと体が動かなくなるので、調整程度の練習しかできない。負けても良いというのであれば、遅い時間まで練習することもできますが、2年生にとっては選抜を目指せる最後のチャンスですから」と苦悩しながらも勝ちにこだわる指揮官。誰もが通る道である初の甲子園を経験した後の難しい秋。大阪偕星学園は今まさに、もがいて、もがいて強くなろうとしている最中である。