試合レポート

鹿屋中央vs鶴丸

2014.07.19

「見ていて気持ちが良い投手」に成長・鶴丸・濵﨑

 鶴丸の甲子園を本気で目指した夏はベスト16で第1シード鹿屋中央に跳ね返された。

 接戦に持ち込むことはできた。
ただ初回はエラー、2回は暴投と失点には自分たちのミスが絡んだ。5回一死一三塁で、3番・武隈光希(2年)の左中間に大飛球を放つ。一走・中迫は抜けたと思い一気に同点を狙って二塁ベースを回ったが、キャッチされて戻り切れず併殺。1点は返したが、反撃を絶たれたのも、自分たちの走塁ミスだった。
中迫主将は「自分たちが積み残した部分をしっかり詰めて甲子園を目指して欲しい」と後輩に夢を託していた。

 エース濵﨑貴介(3年)は1年夏から全部の公式戦で登板経験がある。170センチと決して恵まれているわけではないが、マウンド度胸の良さと安定感で徳重貴久監督の信頼も厚い。

 マウンドではポーカーフェイスを崩さない。
調子が悪かったり、打ち込まれても、逆に調子が良くて良いボールで抑えても、常に冷静さを保っている。それは小学校でソフトボールを始めたときから父・晃久さんの教えだった。

 8回、先制打を含む2安打をされていた4番・木原智史(3年)を迎えた場面では、徹底した内角勝負にこだわった。内角のスライダーで打ち取れる自信があったからだ。
2ボール2ストライクから4球ファールで粘られたが、最後は抜けるだけ抜いたスライダーで空振り三振に打ち取った。最後に一矢報いた会心の投球だったが、マウンドで表情一つ変えなかった。

 1年夏からマウンドに立てたのは「監督さんや先輩や、チームメートのみんなが支えてくれたから」と感謝する。強気なエースが敗戦に初めて涙を見せた。
気になる今後は、東京大に進学して六大学で野球をやるのが夢だという。夢をかなえるために、あすから受験勉強に切り替える。

「あいつは、まだ俺がボール受けるレベルにない」

 父・晃久さんは貴介が1年の頃、そんな話をしていたことがある。晃久さんは名門・鹿児島商の出身で、鹿児島商が86年夏の甲子園でベスト4に入ったとき、控え捕手でベンチに入った経験がある。

 実際に高校に入学してから貴介とキャッチボールをしたことはない。かつて全国レベルの投手の球を受けてきた自負と、息子にスケールの大きな人間になってもらいたい願いがあった。
ホンネの部分では「歳をとって衰えた自分の姿を見せたくない。父親はいつまでもここぞという場面で頼られる大きな存在でありたい」親父のプライドもあったと苦笑する。

「勝負所での気持ちの持ち方」を貴介は晃久さんから一番学んだという。
最後の夏のマウンドを見守っていた晃久さんは、野球を見るのが楽しみで仕方がない表情をみせていた。それは息子・貴介に与えた初めての「合格点」かもしれない。

 7月末には卒部試合がある。「ユニホームを着て、久しぶりに貴介の球を受けてみようかな」と晃久さんは笑っていた。

(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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