岩倉vs都立小山台

9年ぶりベスト4

　ロースコアの競り合いは、お互いのゲームプラン通りだったのだが、序盤に同じようなパターンで得点した岩倉が、先発した背番号7の秋月健太の好投で逃げ切った。
　初回に無死二塁、一死一、三塁というピンチを相手の盗塁失敗などもあって切り抜けた岩倉。その裏は四死球で無死一、二塁とすると、竹中成がきっちり送って、関本鉄也の犠牲フライで先制。一番からの好打順となった3回にも、辻本健徒、安達淳太郎の連打で一、二塁とすると、今度も竹中がしっかりと送り、関本が今度はセンターへ犠牲フライを放ち追加点となった。

ここで、小山台ベンチは先発の松尾拓樹からエースナンバーをつけた大澤真一郎にスイッチした。
福嶋正信監督は、大澤の入りがあまり良くないということを考えて松尾先発で行けるところまで行こうという方針だったのだが、2失点で降板となった。ただ、松尾投手としても、それほど打たれたというものではないだけに、小山台としてはそれほど傷口が大きくならないうちの交代ということに踏み切れたようだ。

結局、岩倉はこの試合では5本の送りバントを決め、2本の犠牲飛球で2得点。派手さはないものの、きっちりとした野球で手堅くリードを守っていった。
岩倉は、磯口洋成監督が、エースの金城直人だと思い切りのいいスイングの小山台打線にハマってしまいそうだというので、秋月投手で行ったのだが、それがズバリ当たったということだ。185cmの秋月は角度を利したタテ系の変化球が武器なのだが、特にチェンジアップが有効だった。ここぞという時に、引っかけさせたり空振りを奪うことが出来た。

終盤の粘りに定評がある小山台は、8回二死一塁から杉崎睦のライト前ヒットでつなぎ尾藤泰平のやや幸運な二塁打で1点差とした。なおも二、三塁となり、一打逆転という場面にもなったが、ここで秋月のチェンジアップが功を奏して三振。ピンチを逃れた。9回も、三者を三振で抑えて岩倉が9年ぶりのベスト4進出を果たした。

苦しい試合を制して、ベテラン磯口監督は開口一番、「くたびれました」と言ったが、その後は少し目を潤ませながら、「今日は選手たちの頑張りに尽きると思います。こんなところまで勝ち上がってきたことのない子たちですから、ノーマークでここまで来て、今日は足が攣ったりする選手も出てきたりもしたのですけれども、よく頑張ってくれました。試合展開としても、ちょうどバントの上手い子のところでバントの場面になれたのもよかったですね」と喜んだ。

岩倉は昨夏は3回戦で敗退。秋季大会も2回戦で國學院久我山に0対9で大敗。春季大会も3回戦で東亜学園に0対6と完敗している。特にこれといった結果を残してきていなかっただけに、磯口監督としても嬉しさは一入なのだろう。

チームの持ち味通りに、終盤に追い上げていった小山台だったが、1点及ばなかった。福嶋監督は無念さを表しながら、「イメージしたゲームプラン通りではあったんですけれども…、初回のチャンスで先制したかったですね。盗塁失敗が痛かった」と悔やんだ。普段は、ノーサイン盗塁OKで、それがいい方向に展開していくのが小山台の野球だけに、悔いもあったのだろう。

(文＝手束仁)