試合レポート

拓大紅陵vs我孫子東

2012.04.28

拓大紅陵vs我孫子東 | 高校野球ドットコム

秦(我孫子東)

規格外のスラッガー 秦 広明

 関東大会をかけて千葉県春季大会が開幕した。[stadium]市原臨海[/stadium]の第2試合は拓大紅陵我孫子東。昨秋は2回戦で敗れ、ベスト8入りすることが出来ず、ノーシードからの登場の拓大紅陵。対するは我孫子東湖北布佐が統合した新設校である。その我孫子東に注目選手がいる。

 その名は秦 広明。なんと194センチ110キロと規格外の体格。ウエイトも一切したことがない純粋に骨格が大きい巨人である。投打の柱であるが、注目されるのは打撃。昨秋の千葉経済戦では弾丸ライナーを打ち込んでいる。ここまでの通算本塁打は28本。久しぶりに現れたスラッガー候補だ。マスコミは彼を見たら、我孫子のジャイアンと名付けるかもしれない。グラウンドを見渡して、すぐに秦を発見出来た。110キロと聞いたが、お腹周りはすっきりしている。背が高く、あまり横っ腹が出ていない力士のような体型だ。足は速くないが、体のキレはそれほど悪くない。

 秦は4番ピッチャーとして先発出場。一挙手一投足に注目してみた。
第1打席は深いライトフライ。その大飛球に観客がどよめいた。秦は「身体が突っ込んでインパクトがずれてしまった」と語っていたが、もしどんぴしゃのタイミングで捉えることが出来ていれば、スタンドイン出来ていたと思わせる打球であった。

 第2打席は外角中心の攻め。秦はストレートを引っかけファーストゴロ。この打席は横から見ていたが、タイミングが外れ、こすったような当たりであった。
「インパクトがずれてしまって弱い打球になってしまった」
と振り返った。

 投手・秦。ピッチャーを始めたのは2年夏の以降から。本格的には投げてはいない。投球フォームはもてあまし気味で、コントロールを意識した投球フォーム。直球は120キロ台で、あまり速くない。詰まらされるような球威もない。ただ両サイドへ淡々と投げ分けていく投球スタイル。初回に1点を失ったが、テンポ良く打たせて取っていき、拓大紅陵打線を5回まで2失点の内容だった。


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秦(我孫子東)

 そして第3打席。第3打席も外中心の配球。カーブ、ストレート、ストレート。2-1となって外角高めのストレートを振り抜く。捉えた打球は投手・木曽の横を抜ける痛烈なセンター前ヒット。腰が入っていない打ち方で、あくまで当てただけの打撃なのに、打球速度は素晴らしかった。これがチーム初ヒットとなった。

 しかし我孫子東打線は拓大紅陵の木曽を捉えることが出来ない。木曽は上背はないが、下半身主導のフォームから130キロ前後の速球、スライダー、カーブを投げ分ける好投手。今日は甘い球は殆どなく、外角中心にしっかりと集めることが出来ており、痛打を許さなかった。

 拓大紅陵は小刻みに点を追加していき、9回の表。打順は一番野原から。一人ランナーを残せば、秦に回る。我孫子東打線だけではなく、彼の一打を待つ多くのファンが一人出る事を望んだ。野原が左前安打で出塁。秦に打席に回るチャンスが訪れ、活気づくが、2番加瀬は内野ゴロ。併殺は防ぎ、3番加藤。しかし加藤は投手ゴロに倒れ、あえなく併殺で試合終了。拓大紅陵が5対0の完勝。秦は4打席目を迎える前に試合終了してしまった。


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秦(我孫子東)

 結果は3打数1安打。打球速度の速さは圧巻で、前評判通りのモノがあった。結果自体は伴っていないが、内容は悪くなかった。まず構えは窮屈さがないこと。グリップを高く掲げて、構えているが、余計な力みはなく、ゆったりと構えることが出来ている。グリップを揺らしながらリストワークを柔軟に使う意図が見える。彼はスラッガータイプの割には仕掛けが早い。投手の重心が下がり始めたところから始動を仕掛けていき、小さくステップして、アウトステップ気味に踏み込んでいく。トップは深く取っていく。早く仕掛けているので、トップが遅れることはない。

 
 最短距離で振り抜くのではなく、ヘッドのしなりを活かしたスイング。ボールを運んでいく感覚で打球を飛ばす。荒削りなスイングをしているわけではなく、ゆったりとしている。仕掛けが早いので、振り遅れもない。ただポイントがずれた打撃が中心となっている。彼は生粋のスラッガータイプではなく、内野の間を抜く鋭いライナーを飛ばしていく。放物線を描く本塁打を打つ選手には見えなかった。

 課題としては膝の動きが硬いので、もう少し膝を柔軟に使って低めの変化球を捌けるようにしたい。踏み込んだ時に膝が突っ張った状態になっており、投手にとっては崩しやすい。彼は巻き込み型でアウトステップ。外角でも引っ張る傾向にある。

 夏にはもっとマークが厳しくなって、まともに勝負出来ない状況が続きそうだが、それはスラッガーといわれる選手の誰もが通る道。厳しい攻めを味わいながら自分の技術を磨き続けることが肝要だ。

 課題は多いが、この先が非常に楽しみなスラッガー。どちらかというと個人のパフォーマンスというより、「試合」がクローズアップされることが多い千葉県。秦の長打力は注目するに値するだけのモノはある。夏では観客を惹きつけるような一発を見せることが出来るか注目してみたい。

(撮影・文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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