智辯和歌山vs花咲徳栄
状況判断とルールの解釈
それは5回のことだった。4対1とリードを広げた智辯和歌山の攻撃、1死3塁。
打者は2番の川崎晃佑。2球目、フラフラと上がった打球は一塁側の花咲徳栄ベンチ方向へ上がった。追ったのは花咲徳栄ファーストの廣瀬茂治。ベンチ際で廣瀬のグラブが前に出た。見事な捕球。しかし、廣瀬はベンチ内に倒れ込んだ。
これを見てスタートした三塁走者の嶌直広は本塁を駆け抜けた。
プレーが止まり、何やら不思議な表情でリクエストをする花咲徳栄の選手たち。審判団が集まり、あらためてホームインの合図をした。
智辯和歌山に5点目が入った瞬間である。
野球規則では、フライを捕った後に、スタンドやベンチなどボールデッドとなる箇所に倒れこんだ場合(倒れこまなくてもボールデッドとなる箇所に踏み込んだ場合)、打者はアウトとなり、ボールデッドになる。
とある。結果として好プレーをしたのに1点を献上した形となった花咲徳栄。
「ミスだとは思っていない。逆に捕れる状況なのに、グラブを引いて捕らなかったほうがミス。ボールデッドになって1点入るとは、あそこでは考えられない」と岩井隆監督は選手を庇う発言をした。
こう話した指揮官の気持ちは十分に理解できるし、ある意味では仕方がないプレーだと言える。
しかし試合が終わってからスコアブックを見返してみると、ここで智辯和歌山に入った2点が一番大きかったのは間違いない。
『状況判断とルールの解釈』
高校生には難しいかもしれないが、こういったシーンはぜひ覚えておいてもらいたい。結果として試合の勝敗に大きく関わることもある。
もしこのプレーでサヨナラになっていたら、その選手は悔やんでも悔やみきれないだろう。
野球はいろんな角度でそれそれ違った見方をできるスポーツだ。
(文=松倉雄太)