試合レポート

智辯和歌山vs花咲徳栄

2011.08.10

状況判断とルールの解釈

 それは5回のことだった。4対1とリードを広げた智辯和歌山の攻撃、1死3塁。
打者は2番の川崎晃佑。2球目、フラフラと上がった打球は一塁側の花咲徳栄ベンチ方向へ上がった。追ったのは花咲徳栄ファーストの廣瀬茂治。ベンチ際で廣瀬のグラブが前に出た。見事な捕球。しかし、廣瀬はベンチ内に倒れ込んだ。
これを見てスタートした三塁走者の嶌直広は本塁を駆け抜けた。
プレーが止まり、何やら不思議な表情でリクエストをする花咲徳栄の選手たち。審判団が集まり、あらためてホームインの合図をした。
智辯和歌山に5点目が入った瞬間である。

野球規則では、フライを捕った後に、スタンドやベンチなどボールデッドとなる箇所に倒れこんだ場合(倒れこまなくてもボールデッドとなる箇所に踏み込んだ場合)、打者はアウトとなり、ボールデッドになる。
とある。結果として好プレーをしたのに1点を献上した形となった花咲徳栄

「ミスだとは思っていない。逆に捕れる状況なのに、グラブを引いて捕らなかったほうがミス。ボールデッドになって1点入るとは、あそこでは考えられない」と岩井隆監督は選手を庇う発言をした。
こう話した指揮官の気持ちは十分に理解できるし、ある意味では仕方がないプレーだと言える。

しかし試合が終わってからスコアブックを見返してみると、ここで智辯和歌山に入った2点が一番大きかったのは間違いない。
『状況判断とルールの解釈』
高校生には難しいかもしれないが、こういったシーンはぜひ覚えておいてもらいたい。結果として試合の勝敗に大きく関わることもある。
もしこのプレーでサヨナラになっていたら、その選手は悔やんでも悔やみきれないだろう。
野球はいろんな角度でそれそれ違った見方をできるスポーツだ。

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.12

プロ注目の200cm右腕・菊地ハルン(千葉学芸)がセンバツ出場校との交流戦でまさかの7失点…夏までの課題は?

2024.05.12

【奈良】天理が決勝最多18得点で圧勝!13年ぶりに春の頂点に<春季大会>

2024.05.12

【和歌山】智辯和歌山が和歌山東を破って2年ぶり優勝、中西が1失点完投<春季大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>