守備の名手を生み出す群馬の名門・前橋育英の守備練習
守備練習に取り組む前橋育英ナイン
2013年夏の甲子園で優勝した前橋育英(群馬)の選手は、伝統的に守備が上手いというイメージがある。
13年の甲子園優勝チームには、土谷 恵介内野手(鷺宮製作所)という好遊撃手がいて、16年の甲子園出場チームには小川 龍成内野手(國學院大ーロッテ)、そして21年夏の甲子園出場チームには岡田 啓吾内野手(明治大進学予定)と、レベルの高い選手が多かった。
ポジション別ノックというメニューがある。捕手だけのノック、投手だけのノック、二遊間だけのノック。また、一塁手が打球を受けて、カバーに入った投手へ送球。内野手は、様々なバウンドを想定し、いろいろな方向に打ち分けられる打球を処理する。さらに二遊間は中継を素早くプレーするために、後ろ向きで送球を受け取り、体を反転させてネットに向かって投げる練習をするなど、実戦を想定した練習が多かった。
荒井監督によると、こうした捕球練習から、実戦で想定できる打球や、中継プレーを練習していないと、本番で生かせないという。
無駄のない中継プレーが実現できるのも、普段の実戦形式の練習の成果だろう。コーチがノッカーとなり、イニング、場面を想定して、打球を打ち分ける。特に走者二塁の場面では、本塁ではクロスプレーとなるが、この練習では、走者も三塁ベースを回る時、膨らみが小さい走塁をして、バックホームする外野手の送球にも無駄がない。走者も、守る選手も同時に鍛えられる、密度の濃い練習をしている。
荒井監督は「守備は走塁もしっかりとやらないと上手くなりません。走塁で何をするべきかを考えていけば、守備にも応用できる」と語るように、走者の場合はワンヒットでかえるには、スタートのタイミングや、無駄のないベースランニングも必要になる。守備では、確実性が高い送球をするためにどんな準備をすればいいか、またはカットマンはどういうタイミングで入るべきなのかなど、考えなければならない。
前橋育英のスローガンは「凡事徹底」だが、行っている練習の内容はかなりハイレベルで、クレバーだった。こういう積み重ねをすれば、名手が生まれるのも必然だと感じた。
(取材=河嶋 宗一)