News

熱射病が疑われるときの全身冷却法

2019.07.30

熱射病が疑われるときの全身冷却法 | 高校野球ドットコム
直腸温の測定ができない場合でも、すみやかに体全体を冷却して救急車を待とう。

 夏の時期はチームでも水分・ミネラル分補給や暑さ対策などの熱中症対策を行っていると思いますが、どれだけ対策を行っていても個人のコンディションによっては体調を崩すことはあります。

 熱中症には、めまいや一過性の意識消失などがみられる「熱失神」、ふくらはぎを始め筋肉のけいれんが起こる「熱けいれん」、暑さによって脱力感やめまい、頭痛、吐き気などが起こる「熱疲労」、応答が鈍い、言動がおかしいといった意識障害を伴う「熱射病」と大きく4つに分類されます。特に熱射病では体温が40℃以上を越えるような状態が続き、命に関わる緊急事態となります。熱射病はいかに早く体温を下げることができるかが予後を左右しますので、少しでも意識障害が見られる場合はすぐに救急車を手配し、同時にすみやかに涼しいところに運んで、体全身の冷却を行います。

 最新の日本スポーツ協会の熱中症予防ガイドブック(2019年5月に改訂)では、スポーツ現場の身体冷却法として最も効果的であるとされているのが、氷水に全身を浸して冷却する「氷水浴/冷水浴法」です。バスタブなどが準備できない場合は、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」を行います。それもむずかしい場合はエアコンを最強に設定した室内に運び、扇風機も併用した上で氷水の洗面器やバケツで濡らしたタオルを準備し、全身を冷やします。太い血管のある頸部、脇の下、脚の付け根などにも氷などをあてて一刻も早く体温を下げるようにします。

 またスポーツ現場での体温測定としては「直腸温」が唯一信頼できる測定とされています。残念ながら腋窩や舌下での体温測定は全身のモニタリングとしては不十分であり、直腸温を約39℃となるまで冷却することが最も大切であるといわれています。ただし、直腸温の測定ができない場合でも、熱射病が疑われる場合には全身の冷却をためらうことなく行います。このときは倒れた人が「寒い」と訴えても続けます。熱射病の救命は、いかに速く(約30分以内に)体温を40℃以下に下げることができるかにかかります。現場で可能な方法を組み合わせて冷却を行い、救急隊の到着を待つようにしましょう。

 参考ページ)熱中症の病型と救急処置(日本スポーツ協会)

文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!

熱射病が疑われるときの全身冷却法 | 高校野球ドットコム~関連記事はこちらから~
暑熱馴化とセルフコンディショニング
投手必見!練習や試合後に意識したいクールダウン
手軽にできる夏の暑さ対策
遠征や合宿時のセルフコンディショニング

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【宮崎】日章学園、富島、小林西などが初戦を突破<県選手権大会地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?