試合レポート

専大松戸vs慶應義塾

2022.10.29

延長10回、専大松戸・上迫田の適時二塁打で粘る慶應義塾を振り切る 今大会注目の専大松戸・平野は途中登板で圧巻の投球

専大松戸vs慶應義塾 | 高校野球ドットコム
7回裏、ピンチを抑えた専大松戸・平野

<第75回秋季関東地区高校野球大会:専大松戸5―3慶應義塾>◇29日◇準決勝◇県営大宮公園

 早朝から多くの高校野球ファンが押し寄せ、関東の中でも非常に大きな県営大宮公園球場のスタンドは観客で埋め尽くされた。その目当ては、来春センバツの出場を大きく手繰り寄せる関東大会ベスト4入りを果たした強豪校による関東の頂をかけた試合だ。

 その第2試合に登場したのは、最速151キロを計測する大会屈指のエース右腕・平野 大地投手(2年)と4番も務める吉田 慶剛捕手(2年)のバッテリーで、強力な作新学院打線を封じた千葉1位校・専大松戸と、清原和博氏の次男・清原 勝児内野手や、粘りの投球を見せる1年生右腕・小宅 雅巳投手らの活躍で2018年以来のセンバツ切符を有力とした神奈川2位校・慶應義塾だ。試合は、延長にもつれ込む大接戦となり、最後は専大松戸が振り切り決勝へと駒を進めた。

 慶應義塾の先発はサイドから投げ込む変則右腕・松井 喜一投手(2年)。初回、2番・清水 友惺外野手(1年)にセンター前安打を許したものの、3番・中山 凱内野手(1年)の打席で渡辺 憩捕手(2年)が強肩で盗塁を刺す。3番・中山も見逃し三振に打ち取り、上々の立ち上がりを見せる。

 対する専大松戸の先発はエースの平野ではなく、背番号3の左腕・渡邉 翼投手(2年)がマウンドに上がる。立ち上がりの制球に苦しみ死球と安打を許したが、5番・福井 直睦外野手(2年)を三ゴロに打ち取り無失点で切り抜ける。

 試合の均衡が破れたのは4回専大松戸の攻撃。1番・大森 准弥内野手(2年)が内野安打で出塁すると2番・清水がきっちりとバントを決めランナーを二塁へと進める。その後、死球と暴投で2死一、三塁とすると、一塁走者が飛び出して挟まれる間に三塁走者の大森が一気に本塁へ生還。一塁走者のアウトよりも僅かに早く生還したため得点が認められた。また、6回には3番・中山の犠牲フライで追加点を上げる。

 先発した専大松戸の渡邉は、6回に2死満塁とピンチを作っての降板となったが、5安打4四死球とランナーを出しながらも要所を締める投球で、6回途中3失点と試合を作る働きを見せた。先発・渡邉のバトンを受けたのは、今大会注目投手の専大松戸エース右腕・平野。しかし、2死満塁の状況でマウンドに上がると、代打で出場した慶應義塾安達 英輝(2年)に右前適時打で同点に追いつかれる。続く代打・村上 迅太(2年)の打席、2死一、三塁の場面で一塁走者が盗塁を試みると、二塁送球をカットした専大松戸の二塁手・宮尾 日向内野手(2年)の本塁悪送球で2対3と逆転を許す。

 専大松戸は失策で逆転を許し、慶應義塾に試合の流れが傾いたかのように見えた8回専大松戸の攻撃。2死一、二塁の場面で打席に立つのは、先ほど2得点目となる犠牲フライを放った3番・中山。この打席からマウンドに上がった慶應義塾3番手・飯田 康太郎投手(2年)の4球目を捉えた打球は二遊間を抜け、再び同点となる中前適時打を放った。

 同点に追いついた専大松戸は、「6回には失点してしまったが、渡邉が粘って投げてくれたので自分も負けないように投げ抜いた」と2番手の平野が最速144キロの直球と低めに集まる変化球で緩急をつけた投球を披露し、粘りを見せる慶應義塾打線をねじ伏せる。

 両者譲らない試合は延長10回に勝負が決する。専大松戸は、2死から4番・吉田と5番・ 太田 遥斗外野手(2年)の連打で一、二塁の好機を作る。6番・上迫田 優介外野手(2年)が左中間を破る2点適時二塁打を放って勝負あり。専大松戸は、粘りを見せた慶應義塾を振り切って史上初となる関東大会決勝の舞台に勝ち進んだ。

 試合後、専大松戸・持丸監督は「出発点は弱いチームだったが、良くここまで成長してくれた。情けない試合が続いたが、その悔しさを糧に選手はよくやってくれた」と喜びの表情を見せた。決勝打を放った6番・上迫田については「普段から感情を表に出さない選手。打席前に顔が堅く見えたので、悔いを残さないように笑って打席に入れと言った」と笑みをこぼしながら語った。上迫田本人は、10回の打席を「今まで引っ張りが強い傾向にあったので、来た球を素直にショートの頭上へ弾き返すイメージで入った」と振り返った。次戦は、専大松戸初となる関東大会決勝の舞台。強力打線を誇る山梨学院相手に、どのような試合を見せてくれるか期待したい。

 一方、敗れた慶應義塾の7番・清原は「最高の仲間とともに決勝の舞台に立ちたかった」と悔しさを滲ませた。また、本大会ベスト4入りで確実的となったセンバツ出場については「甲子園でバックスクリーンに本塁打を放ちたい」と父・清原和博氏のような活躍を誓った。現在173センチ、80キロというがっちりとした体格だが、本人は「さらに筋肉をつけて1試合を戦い抜く力を鍛えていきたい」と今冬の課題を口にしていた。

(取材=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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