試合レポート

花咲徳栄vs西武台

2019.10.07

花咲徳栄が西武台を下し、埼玉1位で関東へ

花咲徳栄vs西武台 | 高校野球ドットコム
須田新太(花咲徳栄)

 小雨混じりの中行われた決勝戦は、Aシード・花咲徳栄とノーシード1回戦から駆け上がり勢いに乗る西武台との対決となった。両校既に関東大会進出を決めているだけに、本来決勝戦は特に投手陣は無理をさせず、消化試合のようになる傾向がある。だが、秋に限って言うと、センバツ選考でベスト8敗退時、その県の1位校であることは重要なポイントになるだけに両校がどれくらいの本気度でこの試合に臨むか注目された。

 案の定、先発は両校共にエースを立てない。花咲徳栄が背番号10の右腕・鈴木朋也(2年)、一方の西武台は二枚看板の一人、右腕の井原壮志(2年)が先発する。そしてスタメンだが、花咲徳栄は前日と打順も含め全く同じ、一方の西武台はこの日9番に李應太(2年)を入れ、試合が始まる。

 試合は序盤から花咲徳栄ペースであった。

 まず初回、花咲徳栄西武台・井原の立ち上がりを攻め、先頭の南大輔(2年)がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く浜岡陸(1年)も四球を選び無死一、二塁とチャンスを広げる。3番・田村大哉(2年)がきっちりと送り一死二、三塁とするが、続く井上朋也(2年)は三振、二死後、5番・中井大我(2年)も四球を選び二死満塁とするが、続く渡壁幸祐(2年)はセンターへライナー性の打球を放つが、センターのファインプレーに遭い無得点で終える。

 それでも花咲徳栄は3回表、打順が2巡目を迎え徐々に井原を捉え始める。

 この回先頭の南がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く浜岡が右中間へタイムリー二塁打を放ちまず1点、さらに3番・田村がセーフティバントを決め、無死一、三塁と一気に畳みかける雰囲気を漂わせる。だが、続く井上が併殺に倒れると後続も倒れ、花咲徳栄はこの回の攻撃を1点で終える。

 初回から花咲徳栄打線に攻め込まれながらも何とか最少失点で切り抜けていた西武台・井原であったが、4回表ついに捕まる。

 花咲徳栄はこの回先頭の渡壁がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く栗島駆(2年)もレフト線へヒットを放つと、この打球がイレギュラーしたこともあり、レフトが後逸しタイムリー二塁打となる。8番・鈴木の犠打は三塁封殺されチャンスは萎むが、花咲徳栄ベンチは続く小林虹希(2年)との所でエンドランを仕掛ける。これが見事に決まり、小林はライト前ヒットを放つと、さらに送球間に打者走者・小林も二塁を陥れ、一死二、三塁と再度チャンスメイクする。ここで1番・南は犠飛を放ち3対0とすると、続く浜岡もセンター前タイムリーを放ち、あっという間に4点差をつける。

 だが、打線に自信のある西武台も、二巡目を迎えた4回裏猛反撃を見せる。

 この回先頭の小松大空(2年)がセカンドゴロエラーで出塁すると、一死後、4番・松木光(2年)がライト前ヒットを放ち一死一、二塁とチャンスを広げる。ここで5番・山田隼(2年)がライトスタンドへ3ラン本塁打を叩き込み4対3と一気に1点差まで追い上げる。

 イケイケムードとなった西武台は、5回表、それまで花咲徳栄打線に捉えられ始めていたこともあり先発・井原を4回で諦め、ここで2番手・室井翔真(2年)にスイッチする。だが、これが誤算であった。

 室井はいきなり井上との対決となったが、臆したかストライクが入らず四球を与えると、その後も立ち直りの気配が見られない。5番・中井、6番・渡壁にも四球を与え無死満塁とすると、続く栗島にレフト前2点タイムリーを浴び6対3、結局一死も取れずマウンドを3番手・齋藤司(1年)へ譲る。

 代わった齊藤も二死を取るが、1番・南に死球を与え二死満塁とすると、2番・浜岡、3番・田村に連続押し出し四球を与え8対3とされた所で、結局マウンドをエース増田優真(2年)へと譲る。増田は後続を切るが、西武台の反撃ムードは萎む。

 それでも西武台は、雨足が強くなり始めた5回裏、何とか反撃を試みる。一死から9番・庄司元汰(2年)、1番・武井大智(1年)が連続死球を選び一死一、二塁とし、花咲徳栄・鈴木をマウンドから引きずり降ろす。代わった2番手・須田新太(2年)に対しても、二死後3番・深田翔太(1年)も四球を選び二死満塁とするが、頼みの4番・松木が三振に倒れ得点を奪えない。



花咲徳栄vs西武台 | 高校野球ドットコム
井原壮志(西武台)

 その後さらに雨足が強まったこともあり、試合は30分ほど中断する。

 中断明けの6回表、花咲徳栄は一死から6番・渡壁がライト前ヒットを放ち出塁すると、二死後、8番・須田もライト前ヒットを放ち二死一、三塁とチャンスを広げるが後続が倒れ無得点に終わる。

 西武台・増田は連投ながらも、花咲徳栄打線に対し、その後も毎回のように走者こそ出すが、得点は許さず9回まで無得点に抑える。

 それだけに西武台は1点でも返していきたい所であったが、西武台打線も6回以降毎回走者事出すが、なかなか打線がつながらない。

 7回裏には、一死から武井がショートゴロエラーで出塁すると、二死後、3番・深田の所で西武台ベンチはエンドランを仕掛ける。これが見事に決まり、深田はライト前ヒットを放ち二死一、三塁とチャンスを広げるが、頼みの4番・松木は中途半端なスイングで凡退し万事休す。

 結局、花咲徳栄・須田が最後まで無失点で投げ切り8対3で西武台を退け優勝を飾った。

 まずは、西武台だが、とにかく1点差に迫った5回表、登板した2投手が誤算であった。もちろん、増田は連投であり、これ以上の負担はかけたくない。春以降も見据えての起用であろうが、地区予選以来の登板となる彼らには、決勝戦しかも花咲徳栄相手の登板は荷が重かった。単純に井原、増田のリレーであればあわやの展開に持ち込める雰囲気があっただけに最後は残念な結果だが、ここまでの勝ち上がりは見事であった。

 今大会は1回戦からの出場となったが、初戦で浦和実業の誇る金子、豆田の投手陣を打ち砕くと打線は波に乗った。さらに増田、井原の二枚看板も共に制球が良く、今大会は結局最後まで乱れることはなくAシード・昌平をも撃破した。これは彼らにとって自信となるであろう。さらに西武台には相手打者の打席での雰囲気を見て配球や外野の位置までコントロールするキャッチャー伊澤の存在もある。

 肩の部分は準決勝以降を見ているとやや過大評価であったが、それでも、この日プロ注目・井上をノーヒットに抑えたような配球や打撃は光るものがある。しかも彼らは新人戦で浦和学院、今大会も決勝で花咲徳栄と対戦した。この経験を23年ぶりとなる関東大会で生かすことができるか。

 一方の花咲徳栄だが、今夏の甲子園大会出場によりチームの始動は一番遅かった。にもかかわらず、結局優勝候補筆頭として、トーナメントを粛々と頂まで勝ち上がった。それはエース髙森陽生(2年)、主砲・井上という投打の軸があることに他ならない。特に新チームはエース髙森が安定しているだけに落ち着いてゲームを進められている。

 打線も旧チームほどではないが、甲子園組3人を中心とし、勝ち上がるにつれ他の打者も徐々に経験を積み、ここへ来て打線としてのつながりを見せ始めている。だが、前の試合でも述べたが、関東大会はワンランクレベルが上がる。まずは関東大会までに髙森以外の投手陣全体の底上げや、守備、走塁面での完成度を高めれば、自ずとセンバツ出場が見えてくるであろう。

 最後に今大会はベスト8に南部地区から4校、東部地区から3校が入るなど、とりわけこの2地区が目立った大会となった。来春はこれらの高校が地区予選を免除され、そのまま県大会もシード校となるが、来春以降はこれらのシード校を破るべく西部地区、北部地区の躍進にも期待したい。

(記事:南 英博

 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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