佐久長聖vs旭川大高

　徐々に陽が傾くなか、大会2日目の第4試合、旭川大高（北北海道）と佐久長聖（長野）の試合が始まった。プロ注目の沼田翔平（旭川大高）に対し、長野大会でチーム打率.399、三振わずか3の佐久長聖打線の対戦に注目が集まった。

　試合は初回から動く。先攻の佐久長聖は長野大会打率.500の1番・真銅龍平が安打で出塁し、2番・上田勇斗への初球、パスボールで二塁進塁。上田の犠打で内野守備が乱れ、真銅が一気にホームイン。佐久長聖が先制点を挙げる。ここで打席に入った4番・西藤慶人は172cm89kgのガッチリ体形。外の球に泳ぎながらもリストの効いた打撃で三遊間を抜き2点目。佐久長聖が幸先よく先制した。

　対する旭川大高は2回裏、一死から佐久長聖の先発・林虹太を攻め、5番・佐々木涼太が外角の直球を弾き返し三塁線への二塁打を放つ。二死後、7番・沢口魁人がやや甘く入った外角直球をライト前に弾き返す。ライトの斎藤真乃輔から素晴らしい送球が来るがホームは間一髪セーフ。旭川大高が1点を返す。

　徐々にエンジンがかかってきた沼田は3回表、先頭の真銅から空振り三振を奪いこの試合3個目。長野大会6試合で佐久長聖が喫した三振数に早くも並ぶ。このあと連打で一死一、二塁とし、打席には4番・西藤。外角高めを叩いた痛烈な打球はショート正面に飛び、6-4-3のゲッツー。落ち着いてピンチを切り抜けた。

　ピンチを切り抜けたその直後、旭川大高がチャンスを迎える。二死から四球と安打で一、三塁。打席には北北海道大会で2本塁打を放っている4番・持丸泰輝。ここで佐久長聖バッテリーにミスが出る。林が投じたフォークを捕手が後逸し、三塁走者がホームイン、旭川大高が同点に追いつく。なおも二死二塁から持丸の右前適時打が飛び出し、逆転に成功。

　ここから両投手が粘りの投球を展開し、試合はしばらく膠着状態となる。次に試合が動いたのは終盤の8回。

　佐久長聖は二死から安打と四球で二死一、二塁のチャンス。4番・西藤の打球は左翼前方に上がり、グラブを構えてチェンジ…かと思われた。しかしレフトの持丸が打球を弾いてしまい、スタートを切っていた走者がホームイン。佐久長聖が再逆転。続く5番・樋口塁大の打球は三遊間を抜け持丸の前に。二塁走者・西藤が三塁を蹴り追加点かと思われたが、持丸がホームへノーバウンドのストライク送球。5点目は防いだ。

　逆転に成功した佐久長聖は8回裏から背番号18の2年生・北畑玲央がマウンドへ。さきほど好返球の持丸に四球を与えるものの、140キロ台の直球を連発し無失点で切り抜ける。

　佐久長聖の1点リードで迎えた9回裏、旭川大高は先頭の沢口が安打で出塁すると、続く8番・青木亮樹が一発で犠打を決め一死二塁のチャンスを作る。ここでラストバッター・中筋大介が北畑のカーブをとらえ、三塁線上に落ちる適時二塁打とし、同点に追いつく。
　さらに内野安打と投ゴロで二死二、三塁とし、打席にはここまで好守を連発する菅原礼央。スライダーをとらえた打球は左中間へフライに。サヨナラかと思われたが、レフト・真銅がセンター・上原怜央と交錯しながらもボールは離さずアウト。勝負は今大会初の延長戦へ。

　10回表を0点に抑えた旭川大高はその裏、絶好のチャンスを迎える。二死から3者連続四球で満塁。カウントツーツーから中筋が弾き返した打球はショートへの難しいハーフライナーに。ここで上田が好捕を見せ、無得点。11回、12回ともに無得点に終わり、試合はついに史上初のタイブレークに。

　無死一、二塁のピンチから始まる状況にも両チームは粘りを見せ、13回はともに無得点。そして勝負の14回へ。

　佐久長聖は1番・真銅の三塁線への絶妙なバントが内野安打となり無死満塁。続く上田の内野ゴロの間に三塁走者が生還。9回以来の得点がスコアボードに刻まれた。

　その裏、旭川大高の4番・持丸は三塁ゴロでサード・西藤がベースを踏み一死一、二塁。続く楠茂将太は二ゴロ併殺に倒れ万事休す。佐久長聖が史上初のタイブレークを制し、2回戦へと駒を進めた。

　敗れた旭川大高は、延長戦に入ってからも再三得点圏に走者を進め、サヨナラのチャンスを作っていたが、あと一本が出なかった。

　勝利した佐久長聖は、最後の最後に、まさに「もぎ取った」という1点で試合を制した。14回を戦い無失策と、バックの守備が光った。

　また、この試合では両チームのショートの攻守が目立った。佐久長聖・上田、旭川大高・菅原はともに非常によく足が動いており、球際に強く、難しい体勢からでもストライク送球を見せて何度もチームの窮地を救うプレーを見せた。

文・編集部