済美vs川之江
勝敗を分けた「判断力」
個人を見れば勝った済美では新居浜ヤングスワローズでも主軸として鳴らした7番・山田 響(1年・左翼手・169センチ65キロ・右投右打)の5打数3安打2得点3打点。2番・中井 雄也(3年・遊撃手・169センチ69キロ・右投右打・五條市立五条東中<奈良>出身)6打数3安打1得点1打点1盗塁といったバイプレーヤーの活躍。敗れた川之江では3番・柴垣 大(2年・遊撃手・173センチ71キロ・右投左打・川之江ボーイズ出身)の5打数3安打などが目を引いたこの準々決勝。ただ、全体を俯瞰すれば、勝敗は初回、済美が5点を先制した段階で決まっていたといっても過言ではない試合であった。
さらにこの5点を細分化して分析すると、一死満塁で5番・伊藤 駿吾(3年・一塁手・171センチ69キロ・右投右打・広島佐伯リトルシニア<広島>出身)を迎えたシーンに行き当たる。この場面、川之江の大西 菖瑚(2年・投手・179センチ71キロ・右投右打・川之江ボーイズ出身)、石原 龍(3年・捕手・172センチ68キロ・右投右打・四国中央市立川之江東中出身)は果敢に勝負。初球はレフトファウルゾーンに打ち上がった。
詰まり気味にファウルゾーンに落ちそうになるところで川之江レフトは「ダイビングキャッチ」で捕球。これが犠牲フライになって済美が先制。その後4点を追加して主導権を握ることになった。「ダイビングキャッチ」。ここが今回のポイントである。
イニングはまだ初回。ここで1点を失ってもアウトを増やしたいのはしごく当然の考え。ただその半面、ダイビングキャッチした時点で1点は確実に失うし、ファウルにしてしまえば、もう「0」で収めるための勝負ができる。難しい判断であるが、ここはファウルにしてしまう選択肢もあったと筆者は考える。
もちろん、6番・山口 直哉(3年・171センチ64キロ・右投左打・南あわじ市立三原中<兵庫>出身)以下が3連打した済美の集中力は讃えられるべきであるし、逆に後続を抑えていれば川之江にもまだチャンスはあった。酷暑の中で冷静な判断を求めるのは文字通り「酷」ではあるが、野球のみならず今後の人生で岐路に立った時も多くの選択肢を事前に備えていれば、被害を最小限に留められる。そこは覚えていても損はないはずだ。
(レポート=寺下 友徳)