試合レポート

八戸学院光星vs花巻東

2015.06.08

夏を見据えて課題と収穫が見つかった両チームの投手陣

先発・中川優(八戸学院光星)

  第2試合も同様、タイブレークとなったが、この試合では投手のレベルの高さが目立った試合となった。
 八戸学院光星の先発は中川優(3年)である。前日の弘前学院聖愛戦で5失点と悔しい結果に終わった。チームは逆転サヨナラ勝ちを決めたので、今日はチームのために「気持ち」で投げぬくことをテーマにしていた。

 内容は良かった。右上手から135キロ前後の直球、スライダー、カーブ、ツーシームとテンポよく投げ分ける投球で凡打の山を築く。
 打線は3回裏に内野ゴロの間に1点を先制。中川も無失点を継続していたが、7回表に佐々木勇哉(3年)に適時打を打たれるが、その後は粘り強く守り切る。

 試合は1対1のまま延長戦となる。無死一、二塁でスタートするタイブレークで、八戸学院光星はいきなり無死満塁のピンチを迎える。この場面に対し、中川は、「エースとして絶対に抑えようと思った」と振り返るように全力投球。3番千田京平(3年)は右飛。しかしライトの好返球で突っ込めず。4番熊谷星南(2年)は最速138キロのストレートで空振り三振。5番佐々木も141キロストレートで空振り三振!三振を奪った中川は雄叫びを上げる。冷静なマウンドさばきがウリの中川にとって、吠える姿は印象的に映った。

 それは中川に求めていたものであった。いかに内に秘めたる闘志をピッチングで表現できるか。135キロ前後の直球、多彩な変化球を淡々と投げ分け、打者を打ち取る投球は完成度が高かった。だがリミッターを外して、全力投球でこれほどのストレートを投げられることに驚きであった。

 このエースの好投に打線が応え、10回裏、加角翔太(3年)の犠飛でサヨナラ勝ちを決めたが、エースがこれほど気持ちがこもった投球を見せると、味方としてはなんとか援護したいと思う気持ちになる。
 高校生としてトップレベルの投球術を誇る中川が、気持ちの強弱をつけながら投球をすると、攻略が難しい投手になる。

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先発・加藤三範(花巻東)

 また敗れた花巻東だが、高橋樹也(3年)以外で夏でも活躍できる投手に目途が立ったこと。2回途中で降板したが、平澤文太(2年)は178センチ68キロの左腕。体の線は細いが、上半身と下半身のバランスが取れたフォームで、肘を支点として投げることができている。体ができて、芯が強くなり、それによって腕の振りも鋭くなれば、現在は130キロ前後だが、135キロ~140キロまで速くなっていくことが予想される。

 そして素材としてはエースの高橋を上回るものを持っているのが、3番手で登板した左腕の加藤三範(みづき・2年)である。180センチ76キロとサイズとしては恵まれたものがあり、肩肘の柔らかさもあり、何よりもフォームのバランスが良い、ノーワインドアップから始動し、右足を高く上げていき、左足はバランス良く上げていきながら、歩幅を広く取って踏み出す。テイクバックの大きさを見ると、実に可動域が広く、そこからスリークオーター気味に腕を振っていくのだ。その腕の振りを見ると実にスムーズで、さらにリーチが長いのでかなり打ち難さがある。常時130キロ~135キロほどだが、これほど打ち難いフォームで、130キロ台はなかなか打ち崩しにくい。

 まだ体ができてからが勝負になる投手で、肩、肘の柔らかさを失わずに、下半身の筋力、体幹部分が鍛えられてから、かなりボールも速くなっていく予感がする。リーチのある加藤の方が、高く評価する野球関係者も多くなっていくだろう。それこそ今からでもプロで目指すために体作り、技術の追求を取り組んでほしい投手だ。

 そして高橋は9回裏のピンチに登板。9回裏は抑えたが、延長10回裏にサヨナラ犠飛を打たれ、敗戦投手となった。今大会は3試合を投げたが、「結果としては良くなかったです。でも自分の課題は、連投の中でも精度を落とすことなく投げることができるか。先を見てはいけないですけど、球数を少なくして、打たせて取ることができる投球ができれば」
今大会は最速145キロを計測するなど、嵌ったときのスライダー、チェンジアップ、カーブのコンビネーションは今年の高校生でもトップクラスの精度である。高橋は、球数を多く費やす投球をしやすい。そこは登板した時に、どう良い状態に入っていけるかである。そうすれば、常に勝てる投球ができるはずだ。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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