試合レポート

都立武蔵野北vs穎明館

2014.07.13

改めて感じた先頭バッターの重要性

 都立武蔵野北が、リードをジリジリと広げる展開で加点し、終盤8回には相手ミスに長打を絡めて大量得点、コールド勝ちを収めた。

 投げては先発の左のサイドスロー・小林勇輝投手(3年)が1失点完投。1回戦の福生戦から2戦で1失点という安定ぶりだ。

 10年前の西東京大会準優勝校であり、3年前にもベスト8に進出した穎明館は、ベンチ入り20人中16人が1,2年生という若いチーム。初回にエラーから喫した失点から、最後まで流れを引き戻すことがかなわなかった。

 都立武蔵野北の得点を振り返ってみる。
1回表に先頭打者、福田雅治選手(3年)がセカンドのエラーで出塁、さらにスチールを成功させ、1アウト3塁の場面から3番打者、豊田航選手(3年)がタイムリーを放ち幸先よく先制する。豊田選手は、3回にも肩口から入ってくるカーブをレフトスタンドに叩き込むソロホームランを放った。
5回には1アウト2塁から6番・新関健太選手(3年)のタイムリー後、スクイズも決め2点を追加。
そして8回に四球と野選でチャンスを作り、1アウト満塁からまたも新関選手が走者一掃のタイムリーツーベース。この後穎明館のミスもあり一挙4点を奪って試合を決めた。


 都立武蔵野北と違い、この試合が初戦となる穎明館の先発・山藤篤志投手(3年)は、長い右腕をしならせ振り下ろすタイプ。エラーから1失点はしたものの、立ち上がりから制球は決して悪くなかった。両チームのピッチャーが安定していたこともあり、試合前半の攻防からはコールドゲームという結末は予想できなかった。では、大きな点差はどうしてついてしまったのか。

 それは、「先頭バッターの出塁」にあったように見えた。

 都立武蔵野北は8回の攻撃回のうち、先頭バッターが6度出塁した(3回の先頭バッター・豊田選手の本塁打も含める)。1回、エラー。3回、本塁打。5回、死球。6回、セーフティバント。7回、セカンド強襲ヒット。8回、四球。得点が入った回は全て先頭バッターが出塁。つまり6度のうち4度を得点に結びつけたことになる。

 5~8回は毎回先頭バッターを出し、次打者はすべて送りバント。1度失敗したものの、3度成功させ得点圏にランナーを置いた。穎明館は6、7回とよく守ったが、8回になって押し切られた。都立武蔵野北によるボディーブローのような攻撃が奏功したのが8回だった、ともいえる。穎明館・山藤投手は8回野選でノーアウト1,2塁となった場面で降板、2番手・副島克也投手に託したが押し切られた。

 勝っていれば、流れに乗る。より落ち着く。負けていれば、気持ちを切り替える。流れを変える。チームをいったん安心させる。先頭バッターを抑えることで、その他にもたくさんの効果が考えられる。もちろん先頭バッターだけが全てではない。しかし、ランナーに出すか出さないかで、その後の両チームの心理に関わってくることは間違いない。先頭バッターの役割の大きさを再確認させられた試合だった。

 同じ視点から見れば、穎明館にも都立武蔵野北に付け入るスキはあった。この試合では3度、先頭バッターを出塁させている。しかもすべて相手エラーからもらった機会だった。しかしバントやエンドランなどはせず、後続が淡々と打ちにいってしまった印象が強い。確かに連打になれば相手への重圧は増すが、打ち取られれば逆に相手の気を楽にさせてしまう……。1、2年生が多いチームだけに、このあたりの試合運び、駆け引きの方法を今後どうチーム内に確立していくか。この敗戦を無駄にしないためには、悔しい経験をチームに還元するしかない。

(文=伊藤亮

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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