試合レポート

聖光学院vs本荘

2013.06.08

14安打の聖光学院が勝利

聖光学院としては課題が残ったが、勝ち続けている理由が見えるゲームだった。

1回裏、聖光学院の1番・八百板飛馬はボールが3つ続いた後、ワンストライクが入って死球で出塁した。2番・西村大樹はすかさず、初球を三塁方向にセーフティバント。あっという間に無死1、2塁とチャンスを作った。3番・横水風寅が遊ゴロに倒れて6−4−3のゲッツーになり、4番・園部聡が見逃し三振に倒れたことで得点にはならなかったが、攻める姿勢を見せた。

西村に心構えを聞いた。「Bチームの時にバントのサインが出て、3球、空振りしたんです。3球ともバットに当たらなくて。それから、バント練習ばかりやってきました。基本から教えてもらって、バントに対してプライドがあります。1番が出たら、自分でもバントだなと思いますし、バントのサインが出されたら絶対に決める自信があります。任せておけと思います。バントのミスは頭を過りません」。自分の役割を理解し、行動に移して成功させるイメージが出来上がっている。何か失敗するときは自信がなかったり、事前の準備が不足していたりする時だ。

さらに2回。5番・酒谷遼がセンター前ヒットで出ると、6番・石垣光浩がきっちり犠打を決めて一死二塁とした。7番・石野佑太がセンターフライを打った。センターがやや後ろで捕球し、二走・酒谷が三塁へタッチアップ。センターはショートに返球したが、ショートの位置が深かった。ここで、酒谷は本塁まで行く姿勢を見せたが、三塁を回ったところでストップ。ホームに行こうとはしたが、結局は、行けなかった。8番・廣瀬和光のライト前ヒットで生還したが、それは結果である。三塁コーチャーの伊藤颯は「行けた」と思っているし、練習試合では何度もそうやって得点してきた。ショートが捕球した位置を確認して、一度止まりながらも本塁を就く。酒谷が悪かったという訳ではなく、聖光学院として決めておきたかったプレーだった。とはいえ、そういう1点でも多く取りに行く姿勢があるから、簡単に負けることはない。


「スキを突く」とよく言われるが、それを実戦できているチームは少ない。

技術の上手い・下手という次元で強さははかれない。聖光学院の選手たちには鍛えられ、そして自ら鍛えてきた強さがある。だから、自信なくグラウンドに立つ選手はいない。さらにいえば、西村の言葉からもわかるように、根拠のある自信を持ってグラウンドに立っている。

試合は、3回に3点を追加。8回表に死球から一死の後、ヒット3本で2点を返されたが、直後の8回裏に3点を奪い返した。主導権は渡さなかった。

結局、ヒットは14本。しかし、3、4番のバットが湿りがちだったこともあり、斎藤監督は「攻撃が雑だったので、うちらしくないなと。バッティングへの期待が高かった分、反省です」と話した。3番の横水、4番の園部は試合後、特打を行った。

先発は、3年生右腕・佐久間悠次。斎藤監督は「今(祐也)か佐久間、どっちでいこうかと思っていたんだけど、右でスライダーを多く投げられるのでね、佐久間を優先させました」と佐久間の先発起用の理由を説明した。

今年の聖光学院はエースが2年生左腕・石井成だ。夏を勝ち上がるため、聖光学院は「(今大会は)負けない事を前提に、今と佐久間を育てる大会」と位置づけている。

佐久間は8回に2点を失ったが、要所を締めて完投。県大会でも経験を積んでいるが、こうしてステージがあった大会を経験することが大切。夏は複数の「試合を作れる投手」が必要になる。「夏につながる大会に」という言葉をよく聞くが、その真意であったり、チームとしてどう捉えているのかが見えにくかったりすることが多い。そういう意味でも、東北大会の位置づけがはっきりしているのも勝ち続けている理由ではないだろうか。

(文=高橋昌江

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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