試合レポート

日本福祉大付vs愛知

2021.07.26

日本福祉大付、悲願でもあるベスト8進出を果たし、感極まる

 愛知大会は春季県大会のベスト8がシード校となって、それぞれのヤマに振り分けられる。組み合わせ抽選では、シード8校のそれぞれのゾーンでベスト8進出を決める5回戦までの組み合わせが決まる。そして、多くの監督たちが言っているのだが、夏の愛知大会は、5回戦までで一つの大会という感覚。そして、再抽選した準々決勝からは、次のステージの新たな大会が始まるという意識になるという。

 そのネクストステージを目指す5回戦はベスト8という、一つの壁にも向って行く戦いでもある。そのプレッシャーも相当なものである。

 初のベスト8を目指す日本福祉大付は前日の4回戦で時習館に、何と19対1という大差で勝利しての進出である。対する愛知は、シード校の桜丘を下しての進出で、どちらも勢いがある。

 日本福祉大付は松山、愛知は堀と、ともに背番号1を背負った左腕投手同士の先発で始まった。やはり、緊張もあってか、お互いにちょっと硬いかなという印象もあった。

 愛知は初回、先頭の飯田が三塁強襲安打で出ると、一死二塁としたところで3番中神が中前打して先制する。2回にも愛知は、7番手嶋が一塁へボテボテながら内野安打で出ると、一死後9番小林が中越えの大きな弧を描く二塁打を放って、2点目を追加した。

 早い段階で返したい日本福祉大付は3回、8番の松山が中前打で出ると、失策とバントで一死二、三塁とする。2番中村の内野ゴロの間に三塁走者がかえり1点差。さらに、山下も遊撃内野安打で、2対2の同点となる。

 中盤になって、両投手も落ち着いてきたかなというところだったが5回、日本福祉大付は一死一塁に安打の石川を置いて、2番中村がセンターバックスクリーンに入る2ランを放ってリードする。

 さらに、山下もレフト線二塁打を放つと四球もあって、二死一、三塁となった。ここで、6番岩田の一打は左中間を破って2者をかえす。日本福祉大付は前日19点を奪った打線がようやく爆発したという感じだった。これで、愛知の飛田 陵佑監督は堀を諦めて、右の升田をマウンドに送った。


 日本福祉大付は、松山が尻上がりに調子を上げて行く。そんな松山をさらに援護すべく打線は7回、二死から失策の走者を一塁に置いて、代走柳瀬を送ると、エンドランを仕掛けて積極的に打って行った服巻の打球が右中間を破る三塁打となり柳瀬が生還して7点目となった。

 愛知は8回に中神が二塁打して、光森の左前打でかえり1点。9回も一死から代打松岡の左前打と暴投に小林大悟の左前打で1点を加えて食い下がったもののここまで。最後まで投げ切った松山を攻略しきれなかった。

 試合後、日本福祉大付の山本 常夫監督は、「この2年半、私も選手たちにボロカスに言って来たけれども、それに耐えてよくついてきてくれた…。ベスト8は本当に一つの目標だった…」と語っていると、感極まってきたのか、思わず目頭を押さえていた。

 鹿児島県の神村学園を率いて5度甲子園出場を果たしている。その名将が、まったく野球環境には恵まれていない日本福祉大付に赴任して、苦節3年。ほとんど0に近い状態からチーム作りを始めてきた。赴任当初は戸惑いや、選手たちの野球との対し方に対して歯がゆい思いを感じたこともあったという。

 それでも、知多半島の片田舎で、本気で甲子園を目指していこうという姿勢を徐々に浸透させてきた。

 勝つことがすべてではないけれども、結果をもたらすことが生徒たちの自信にもつながる。また、それが一つの成功体験となって選手たちは人間的にも成長していく。そういうことも、十分に承知している。だから、敢えて厳しく当たっていったこともあった。

 この冬から春は、徹底的にバットスイングをさせていった。そして、全員が強い打球を打てるようになっていった。「神村学園で甲子園に行った時のチームよりも、打撃力はあるんとちゃうかと思うくらい」と言うように、選手たちは打撃に自信を持っている。

 こうして、最初の目標にたどり着けたことで、チームとしての自信も得られた。日本福祉大付の選手たちは次のステージの意味を噛みしめながら、まだまだ夏の戦いが続いていく。

 いい形の試合の入りが出来た愛知は、中盤で逆転されたものの、終盤では追い上げていった。就任2年目の飛田監督は、「最後まで諦めないという姿勢、簡単に終わらないぞという姿勢を示してくれたことは、自分たちが目指していたスタイルでもあります。自分自身も、生徒たちから高校野球の素晴らしさを教えてもらっています。伝統のあるチームなので、そのカラーも大事にしていきたいと思っています」と、コーチ歴は長いものの、昨夏は選手権大会が中止となってしまったので、夏の選手権大会は初采配となったが、その思いも述べてくれていた。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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