試合レポート

樟南vs国分中央

2018.04.04

「勝ち」を意識すること・樟南、国分中央

樟南vs国分中央 | 高校野球ドットコム
樟南の5点目のシーン

 勝負事は「勝ち」を意識した瞬間から、パフォーマンスに微妙な狂いが生じ、試合の流れを大きく左右する。そんなことを痛感させられた試合だった。

 上位常連の樟南と初の4強入りで勢いのある国分中央。序盤は準決勝の舞台にも慣れた樟南の一方的な展開になりそうな雰囲気だった。
 エース松本晴主将(3年)が2回に自らのレフトオーバー二塁打で2点を先取。バッテリーを組む9番・内村歩夢(2年)も強襲内野安打で3点目を挙げた。3回は連続四球に送りバントが内野安打となって満塁とし、7番・若林凌太(3年)のセンター前2点タイムリー、8番・松本が3打点目となる犠牲フライを放った。
 松本の実績、実力を考えれば、十分な6得点だったはずだが、3試合ぶりの先発だった松本の調子が上がらない。松本は、球威のある直球やキレのあるスライダーを、右打者の膝元、左打者の外角低めに強気で攻める投球ができるのが持ち味だが、一つ間違うとぶつけて死球になったり、ワンバウンドして暴投や捕逸になることがある。2、4回の失点はまさにそれが要因でピンチが広がり、とられたものだった。
 7回裏一死からヒットを打たれ、3つ目の暴投をしたところで、マウンドを宮下尚哉(3年)に譲ることになった。
 「勝ちを意識して焦ってしまい、投げ急いでしまった」と松本は自らの投球を振り返った。

 松本が降板した時点でスコアは7対2。樟南優位は揺るがないと思われたが、ここから国分中央が反転攻勢に打って出る。

 二死三塁から代打・久冨雄大(3年)のタイムリー内野安打で反撃の口火を切ると、更に二、三塁とチャンスが広がり、過去3打席で松本から2本の二塁打を含む3安打と当たっていた7番・田之畑翔也(3年)が左中間二塁打を放ち、点差は2点と一気にワンチャンスでひっくり返るところまで盛り返した。

 8回裏、併殺で勢いもここまでかと思われたが、そこから粘って満塁のチャンスを作り、5番・久冨が初球を迷わず振り抜いて、走者一掃のライトオーバー三塁打で初めてリードを奪った。

 9回表、試合の流れは劣勢の展開を跳ね返した国分中央にあった。先頭の4番・松下航太(3年)を打ち取って一死となった時点で大きく勝機を手繰り寄せたかに思われたが、今度は「勝ちを意識」したプレーが国分中央に出る。

 5番・髙橋黎(3年)がレフト線二塁打で出塁。国分中央・床次隆志監督は「同点、OKでいいぞ!」と伝令を送ったが、続く6番・川越蓮(3年)のセンター前ヒットを後逸。二死まではこぎつけたが、三塁ゴロ一塁悪送球でピンチが続き、代打・齋藤惇希(2年)に走者一掃のライトオーバー三塁打を打たれ再び勝ち越しを許し、国分中央は大魚を逸した。
 「最後は落ち着いた守りができなかった」と床次監督は悔やむ。やはりこちらも「勝ち」を意識して地に足のついた野球ができなかった。

 「一つ一つのことを丁寧に、一生懸命やろう!」
 試合後、樟南・山之口和也監督はナインに檄を飛ばす。序盤、「勝ち」を意識したが故の気持ちの抜けたプレーが重なり、自分たちで苦しい試合にしてしまった。「あすはバッテリー、守備からリズムを作る自分たちの野球をやる」と松本主将は誓っていた。

(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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