試合レポート

芝浦工大柏vs小金

2016.04.23

9回に2点差を追いついた芝浦工大柏がタイブレークを制す

芝浦工大柏vs小金 | 高校野球ドットコム

芝浦工大柏・真子君

 2点差で迎えた9回に、「一番信頼している選手から感じた空気を信じた」という福田 允監督の策がズバリ当たって同点とした芝浦工大柏。その勢いで、タイブレークでは不利と言われている後攻めながら、表の無死一二塁からの攻撃を0に抑えて、その裏1点を奪い取って接戦を制した。

 試合展開としては2回に小金が四球と失策で作ったチャンスに、4番白旗君のややラッキーな安打で2点先取。それを追いかける芝浦工大柏は6回、1番からの好打順で大熊君が中前打で出ると、エンドランをかけようとしたところで牽制に挟まれたがランダウンプレーで生きて無死二塁。内野ゴロで三塁へ進むと、打っても3番に入っている真子君の中前打で1点差。さらに四球などで二死一二塁となって、代打加藤君が福田監督の起用に応えて三遊間を破って二走が帰り同点となった。

 そのまま同点が続いていたのだが8回、小金は3番中津君が左越二塁打の送球ミスで三進して、4番白旗君が中前打で帰し、藤山(とうやま)君が送ると内野ゴロと、7番鶴岡君の一二塁間を破る安打で2点差とした。試合展開からも、ここへ来ての2点は大きいかと思われた。

 そして迎えた9回、5番からの芝浦工大柏だったが、竹本君が投手強襲の内野安打で出ると、代打山口君の時に、福田監督の「あえて、1点ずつ取っていこうということで、ここは勝負だと思った」という考えで二塁盗塁を決める。7番田中勇君が左前打して一死一三塁。そして、8番高山君はまさかのセーフティースクイズ。1点は返したものの二死となって二塁。しかし、福田監督が一番信頼しているという9番打者の児玉君はこの場でしぶとく左前打して、二走が帰って同点となった。


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小金・関悠介君

 常識的には2点差の9回、一死一三塁でスクイズはあり得ないところだ。守る小金としても、アウトが一つ増えて、しかも打者は9番。内心ではラッキーと思った場面かもしれない。ところが、そうした野球の常識を超えた、福田監督と選手との信頼があって、それがこういう土壇場で実を結んだのだ。実は、福田監督は今の3年生たちとは、芝浦工大柏中時代から継続して指導してきており、6年目の付き合いとなる選手が多い。そうした中で育まれた師弟の絆が、こうした形で発揮されたのである。

 こうなったら、勢いは芝浦工大柏だった。

 タイブレークは、無死一二塁という設定からの開始となったが、10回表、1番からの小金の攻撃はバントで進塁は許すものの、一死二三塁から真子君が踏ん張って0に抑える。これで、後攻めは1点をどう取るのかということに終始できるのだが、1番の大熊君のバントは送球ミスを誘って無死満塁。そして、2番宮下君が中犠飛を打ち上げて、サヨナラを決めた。

 中高一貫で入ってきた生徒が約3分の2という芝浦工大柏。先発メンバーでいえば、投手で3番の真子君と4番の辻井君が高校からの入学生。彼らが、附属中から上がってきた選手たちと上手に融合しているという感じでもある。「力はありません。だけど、狭いグラウンドで一生懸命練習してきた生徒たちを信じて、そして、信頼していた選手たちが本当によくやってくれました。9回は、何度か勝負をかけたのですけれども、それに選手が応えてくれましたから、やっていても面白かったです」と、喜んだ。

 これに対して、小金の日暮 剛平監督はさすがに肩を落としながら、「勝てる試合を落としましたね、悔いは残ります」と残念がった。そして、「6回に同点にされた場面…、迷ったんですけれども、継投のタイミングが一つ遅かったかもしれません」と、ベンチの迷いも含めて反省材料を挙げていた。

(文=手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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