試合レポート

普天間vs首里東

2014.09.14

二桁奪三振も点数は70点。未だ発展途上の未完成の大型右腕

普天間vs首里東 | 高校野球ドットコム

普天間・與那原

 これ以上ない万全の投球だった。

「全体的に初の大きな公式戦(新人中央大会予選を除く)初戦ということで緊張していた」
普天間知念 正仁監督が振り返ったが、それが一番大きいのが初回のマウンドに上がるエースだろう。

 だが與那原 大剛(よなはら・ひろたか)はそれを微塵も感じさせない立ち上がりを見せる。
1回表を僅か7球で打たせて取ると、2回表の5番打者から3回にかけて5者連続から空振りを奪う三振ショーを演じたのだ。その3回は下位打線からということもあり「打たせるぞー!」と與那原がナインに声を掛けたのち全球、といっても言いほどストレート主体で攻めたにも関わらず、首里東打線はそのストレートに合わせることが出なかった。

 すると3回裏、普天間は9番知花 泰幸(ちばな・やすゆき)がバントヒットを決めると1番に返った高良 雄士(たから・ゆうじ)も同じくバントヒットを決めてチャンスを得る。だが、ここで一気に押しきれないところが普天間打線の課題なのかも知れない。

 好打順ではあったがレフトフライとショートフライに終わり、このまま無得点で終わるようなことがあれば首里東に流れが傾いても不思議では無かった。
が、ここでもチームを救ったのが前チームから4番を張る與那原だった。

「前打席で三振に倒れてしまったのでここは何がなんでも返そうと思った」という與那原はインコースのストレートに的を絞って立った(與那原)が、初球はカーブ。見送った姿を見て首里東バッテリーも「ストレートを待っているな」と感じたに違いない。続く2球目もカーブで入ったところ「初球の残像が残っていた」という與那原のバットがそれに反応。バットの先っぽだったというが、まだ1ストライクということもあり、且つ187cm83Kgの恵まれた身体から生まれるフルスイングが生きる。打球はセンターの頭上を超える先制の2点タイムリーとなったのだった。


普天間vs首里東 | 高校野球ドットコム

3安打の普天間・高良

 だが4回表、今度は與那原自身の“ピッチング”自体での課題が浮き彫りになる。

 先頭打者にヒットを許すと「すぐ決められて焦った」(與那原)犠打で得点圏に走者を背負うと、3番長嶺 幹弥にもヒットを浴び一死一・三塁とされる。ここで「点を許してしまうといけないと」(與那原)腕が振れないまま投げた変化球が、ベース手前で落ちるワイルドピッチで簡単に点を許してしまった。
さらに二死後走者を二塁に背負って再びワイルドピッチを犯すとボールは相手ベンチ前まで転がってしまう。これをみた二塁走者が一気に生還し2対2の同点になったと観客は思ったが、ボールが拾い上げることの出来ない場所へ挟まっていたということで三塁へ戻されてしまい1点のみで終わってしまうなど、普天間にとっては不幸中の幸いとなった。

 追い上げられた直後、内野安打と盗塁、犠打で三塁へ進めた普天間山内 昌磨(やまうち・しょうま)が初級スクイズを決めて1点を加えると、なお二死三塁として高良がセンター前へ弾き返して4対1と突き放した。これで自分のピッチングを取り戻した與那原は5~7回まで三者凡退(4番から始まった7回、この日二度目となる三者三振)で締めると、8回裏には一死二塁から浜畑 維(はまばた・ゆい)にタイムリーが飛び出してダメ押しとなる5点目を刻んだ。

「新チーム発足から守りの基礎を繰り返した」という知念監督はまた、「単純な繰り返しの作業でも誰ひとり腐らずについてきてくれた」と、この日の守りがノーエラーだったナインを褒めたたえた。
また、10奪三振完投にも関わらず「フォームも手探りだし今日は70点の出来」と與那原自身で言った未だ発展途上で未完の大器の、高校野球最終章も期待しつつ見守っていきたいと思う。

(文=當山雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.18

【秋田】明桜がサヨナラ、鹿角は逆転勝ちで8強進出、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.05.18

【岩手】一関二、盛岡誠桜などが初戦を突破<春季大会>

2024.05.18

【関東】昌平・山根が2発5打点、東海大相模・4番金本が2ランなどで初戦を快勝、東海大菅生は山梨学院を完封<春季地区大会>

2024.05.18

【長崎】長崎西、島原中央などが初戦を突破<NHK杯地区予選>

2024.05.18

【春季関東大会】白鷗大足利・昆野が最速152キロを計測!前橋商の剛腕・清水はまさかの5失点…。チームもコールド負け!

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?