試合レポート

横浜vs桐蔭学園

2012.05.08

横浜vs桐蔭学園 | 高校野球ドットコム

 田原啓吾投手(横浜)

神奈川の黄金カードは緊迫した競り合いに!

神奈川の黄金カード、横浜桐蔭学園。強豪同士の対決に、[stadium]保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアム[/stadium]の内野席はほぼ満員となった。

終盤までは1点を争うロースコアの接戦となった。
横浜の背番号3・田原啓吾が変化球を主体に打たせて取るピッチングで、7回途中まで1失点。2回裏に森川大樹菊池新大に連打を浴びて失点した以外は、危なげない内容で「収穫は田原」と渡辺元智監督が語るほどの出来だった。ここまで当たっていた3番佐藤将に対して、外のスライダーを中心に組み立て、3打席凡退。相手の核をきっちりと封じた。

桐蔭学園の先発は2年生エースの齊藤大将。立ち上がり制球に苦しむが、2回からは直球、スライダー、フォークを低めに集め要所を凌いだ。

悔やまれるのは6回のミス。1死1塁からけん制が悪送球となり、ランナーは一気に三塁へ。直後に長谷川寛之にスクイズを決められ、同点に追いつかれた。ファーストとのタイミングがあわなかったのか、中途半端なけん制となり、ボールが高く抜けてしまった。

1対1の同点で迎えた7回。横浜は2死1、2塁から代打のキャプテン尾関一旗が三塁線を痛烈に破るタイムリー二塁打で勝ち越す。選抜大会後、肩の違和感と左手小指のケガで公式戦には出ていなかった。バットを振り始めたのも、この試合の3日ほど前というキャプテンが持ち前の勝負強さを発揮した。
そして7回裏、田原が先頭の小河諒にヒットを打たれたところで、渡辺監督はエースの柳裕也を送った。準々決勝の川崎北戦でも7回途中からのリリーフ。春の大会の必勝リレーといえる。
ところが、この日の柳は直球、変化球ともにキレを欠いていた。5番の久保聖也に高めのシンカーを右中間に打たれると、森川には外角高めのストレートをライト線に持っていかれ、2点タイムリー三塁打。さらに7回途中から代わった二番手・横塚博亮にスクイズを決められ、この回3失点。あっという間に逆転された。
本来のデキではなかったのには理由がある。試合後、渡辺監督が明かした。
「右肩に違和感を覚えていて、本当は投げさせたくなかったんですが、こういう展開になったので。疲れが出ているのでしょうね」。


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3番・佐藤(桐蔭学園)

流れは桐蔭学園。その中で横浜が終盤2イニングに強さを見せた。
8回に二番手の横塚を攻めて、山内達也の二塁打で1点差。このあと、1死1、3塁とチャンスが続き、代打に1年生の高濱祐仁を送るが、ここは三番手・辻中知樹の低めに落ちるスライダーに空振り三振。1点差で9回に突入した。

9回表、柳に代わる代打の伊藤弘夢がピッチャー強襲の内野安打。続く拝﨑諒は初球バントの構えで見送ると、2球目には一転して強攻でレフト前ヒット。
「サードが前にきて、三遊間が空いていたので打たせました」と渡辺監督はその狙いを明かす。
宍倉和磨が送り、1死2、3塁。打席には2番・高橋亮謙。ベンチも高橋も、頭にあったのはセーフティスクイズ。2球目にセーフティスクイズをファウルにするが、4球目にセカンド方向にきっちりと転がし、まずは同点に追いついた。

なおもチャンスが続き、3番の長谷川。初球、またしてもセーフティスクイズ。これをファウルにしたところで、ベンチからは「打て」のサイン。内野手が前に守り、セーフティスクイズに対する警戒が強まったという判断だった。そして直後の2球目を思い切り引っ張り、三遊間を抜けるタイムリー。拝崎同様にベンチからのサインの切り替えに、見事に応えた。
9回裏は、三番手の相馬和磨がヒットを許すも後続を断ち、ゲームセット。相馬は派手なガッツポーズで、喜びを表現した。

9回に同点のセーフティスクイズを決めた高橋はこう語る。
「今年は圧倒的に勝てる強さはない。細かい野球をして、負けないチームを目指していきたい。それが理想です」
高橋は1回裏にランナー一塁の場面で送りバントを失敗した。サインは送りバント。それでもサードがチャージしてきたため、「あそこはバスターで打つ場面。自分で考えてやるべき。普段からそういう練習をしているんだから」と渡辺監督は一段上の野球を要求している。横浜が目指す野球はまだまだ先にある。
この勝利で、横浜は3年ぶりの春季関東大会出場を決めた。
 

(文・写真=大利 実)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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