県立岐阜商vs大垣西
県立岐阜商・藤後
エース藤後が初完投 県立岐阜商きっちり差し切り
秋の高校野球岐阜大会は23日、[stadium]長良川球場[/stadium]で準決勝を行い、第1試合では県立岐阜商が終盤に逆転して東海大会進出を決めた。
「序盤に拙攻を重ねながらも終盤に逆転、いつもそんな試合ばかりで…。本当は望まない展開なんですが、粘り強く戦えているということでしょう。今日も相手の流れでしたが、よく取り戻しました」。試合後、藤田明宏監督は落ち着いた様子で試合を振り返った。2回裏のスクイズ失敗によるダブルプレーをはじめ、牽制死などミスはあった。だが、7回裏に5番田中宏樹のタイムリーで同点に追いつくと、8回裏には9番藤後彰太が犠牲フライを放ち逆転に成功した。
県立岐阜商の打線は4番堀内雅史、5番田中宏樹とパワーのある左打者が並ぶ。7回裏の同点劇は、3番・武藤嘉威がヒットで出塁すると、堀内が送りバント。その後、田中がセンター前へ抜ける打球を放って、武藤を返したという流れだ。中でも田中は、1年生時からゲームに出場している捕手。豪快なスイングで、最後の押し込みの瞬間に、強靭なリストを柔軟に使えているのが光る。
投げては背番号1の藤後が、自身初の完投で勝利を呼び込んだ。初回、2つの四死球で先制を許し、50イニング近い自身の連続無失点記録が途絶えたが、「ベンチから声をかけてもらえたし、気持ちを切り替えた」と2回以降は快投。低目に決まるスライダーと、最速138キロのストレートのコンビネーションで、2被安打12奪三振に抑えた。
「先制点を取られた後も落ち着いていたので、そこは評価していいと思います」とは藤田監督の談。伝統校らしい動じない心、落ち着いた試合運びは、同じ高校球児の中でも、抜きん出ていると感じる。
敗れた大垣西は、初回に岡島佑樹がライト前タイムリーを放ち先制すると、エース大藏彰人がキレと角度のあるストレートで県立岐阜商のスコアボードに6回までゼロを並べた。それだけに終盤、2失点に直結した守りのミスを福島秀一監督は悔やんだ。「あそこまでいったら、逃げ切りたかったね…」と苦い表情だ。
大藏は試合後、翌日の3位決定戦に向けて「東海大会出場へはもう後がないので、逃げずに向かっていくだけです」と気合いを入れ直した。敗れはしたが、強豪・県立岐阜商を相手にしても、持ち味である対角線へのストレートをピシャリと決め、ボール球も振らせるワザも持った大藏の好投は、その名前も実力も、県下に広く知らしめるものとなった。
(文=尾関雄一朗)