試合レポート

東京実vs東亜学園

2019.07.10

昨秋ベスト4の東亜学園を封じた宮内翔生の強気の内角攻め

 東亜学園と毎年、シード校や強豪校を食う戦いを見せる東京実との一戦は緊迫とした勝負となった。

 東亜学園はエース左腕・細野晴希の登板に注目が集まったが、先発マウンドに登ったのは東進太郎。この起用について武田監督は「ここ最近の練習試合では調子が良く、先発もずっと彼だったんです。練習試合の流れで先発となりました」と起用理由を明かす。確かに168センチから投げ込む速球は常時130キロ前後・最速133キロ。120キロ台のスライダーの切れが良い。

 しかし東京実はそんな東の立ち上がりをついて、セーフティバント、四球と無死一、二塁のチャンスから犠打で一死二、三塁のチャンスを作り、4番松原龍之介(3年)の中前適時打で2点を先制。大会前の練習試合では、なかなか状態が上がらないまま大会に突入した東亜学園にとっては苦しい立ち上がりとなった。

 東京実の先発・宮内翔生(3年・右投げ右打ち・174センチ76キロ)は粘り強いピッチングを展開。ノーワインドアップから始動し、内回りのテークバックから球持ちの良い投球フォーム。ストレートのスピードは常時128キロ~135キロを計測。両サイドに厳しく投げ込み、スライダーも左打者の内角へ投げ込む。東京実の歴代の投手の中でも上位に入る素質はある。

 特に光ったのは走者を出してからの粘り強さだ。この試合、得点圏に走者を背負ったのは7イニング。それでも崩れなかったのは挑戦者の気持ちだ。

東亜学園は素晴らしいチームですし、格上の相手だと思っていましたので、攻める気持ちは忘れないよう心がけました」
 そんな中、光ったのは内角攻め。130キロ前半の速球を次々と左打者の懐に投げ込み、東亜学園の打者は詰まったフライを打ち上げる。最後まで強気な姿勢を忘れなかった。そんなエースの好投に応えようと、5回表に3番佐藤翔のタイムリーで1点を追加。エースとして2点の援護を守り切った。


 世田谷南ボーイズ出身、1年生~2年生まではケガがちで、ベンチ入りしたのは2年秋から。その時も野手としてのベンチ入りだった。ケガが癒え、3年春は背番号1をもらったが、走者を出すと自滅することが多かった。だが、この試合は最後まで粘り強く。走者を出せば、捕手がマウンドに駆け付け落ち着かせるなど、地に足がついた戦いができた。エースの投球ぶりに山下監督は「今日は宮内の成長が現した試合だったと思います。粘り強く投げてくれました」とエースの力投をたたえた。

 146球完投勝利の宮内は「東亜学園さん相手に自分が心掛けていた強気の攻めができて、勝利できたことはとても自信になりました」と笑顔を見せた。

 宮内のほかに活躍した選手を挙げたいのが3番佐藤翔(2年・184センチ72キロ・右投げ右打ち)。細野から適時打を放ったが、まだまだ打撃は硬い。それ以上に魅力的なのがレフトからの強肩だ。外野から投げ込む返球はまさに超強肩だった。山下監督によると、公式戦でも登板をしており、同点の状況になっていれば、登板する機会もあったそう。この試合、NPBのスカウトも駆けつけており、目当ては相手エースの細野晴希のピッチング。しかしあまりの強肩ぶりにスカウトも観てみたいという声が相次いだ。果たして東京実はこの勝利を機にさらに大暴れを見せるのか、大いに注目をしていきたい。

【 速報ページはこちら 】

■開催期間:2019年7月7日~7月27日(予定)
2019年 第101回 全国高等学校野球選手権 東東京大会(三回戦まで)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会】
■展望コラム【東東京大会展望】二松学舎大附の夏三連覇を阻むチームは現るか?東東京大会を徹底解剖!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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