試合レポート

都立小岩vs獨協

2018.07.08

両エースによる投手戦はまさかの結末に

 日差しが少しずつ和らいできたが、獨協都立小岩の試合は回を追う毎に熱さが増してきた。

 都立小岩の先発はサウスポーの戸村亮。球速以上に力強い真っすぐを軸に、1回から3回まで獨協打線をノーヒットに抑える。
 すると2回、5番・鈴木陽晃がセンター前にヒットを放つ。続く6番・渡辺伶はファールフライに倒れたが、一塁ランナー・鈴木が相手守備がもたつく間に二塁を陥れる好走塁でチャンスを広げる。

 7番・戸村は7球目をライトに弾き返して、一死一、三塁の場面を作る。ここで先取点が欲しかった都立小岩だったが、8番・小久保開偉が浅いセンターフライ。9番・黒川真生人がサードライナーに倒れてしまい、獨協の先発・石山嵩也から先制点が奪えない。

 両投手の好投で、投手戦となったこの試合。両校無得点のまま5回が終わり、試合は後半戦へ。

 整備の後は試合の流れが変わりやすいポイントの1つに挙げられてるが、この試合も6回に流れが変わった。
 獨協の9番・小池篤朗が四球、1番・木村尚彦にレフト前ヒットを打たれピンチを迎える。2番・矢島諒治をサードゴロに仕留めるも、3番・相原陸人にこの回2つ目の四球を与えて一死満塁にしてしまう。ここで4番・石山にショートへの内野安打を打たれ、先取点を獨協に与えてしまう。

 その後、5番・田知本奨の三遊間寄りのショートゴロをゲッツーにすることができず、さらにもう1点取られた都立小岩。ここまで獨協の石山から放ったヒットはわずか3本。この後いかに攻略するのか、そこがポイントなりそうな都立小岩は、終盤にその糸口を見つけた。


 7回の先頭バッター・渡辺がセンター前への二塁打で、都立小岩は無死のランナーが出る。続くバッターは、ここまで素晴らしい投球を見せ続ける8番・戸村。バッテリーエラーがあり、無死三塁の大チャンスとすると、戸村の打球はピッチャーへの強襲ヒットとなる。

 打球処理にもたついていると判断した三塁ランナー・渡辺は、一気にホームを狙う。結果としてホームタッチアウトとなり得点には結びつかなかったが、戸村は三塁まで進んで一死三塁とチャンスは続く。
 ここで8番・小久保はセカンドゴロに倒れたが、獨協内野手陣は定位置に守っていたため、このゴロでランナーが生還。2対1と点差を縮める。

 8回は3番・渡辺壮太郎が初球をセンター前に弾き返し、都立小岩は同点のチャンスを作る。4番・関拓斗は倒れるも、一塁走者・渡辺の盗塁で二死二塁とする。一打同点の場面で、5番・鈴木はスタンドとベンチの期待に応える値千金の同点タイムリーを放ち、試合は振り出しに戻る。

 前半の投手戦が嘘のように、後半からは互いに打線が要所でヒットを放つこの試合。次の1点の行方が試合を決める流れになったが、9回にドラマが待っていた。
 相手のエラーと内野安打で一死ながら二、三塁のサヨナラの場面を作った都立小岩。ここで代打の大谷峻平が四球でチャンスを拡大して、一死満塁。打席にはここまでノーヒットの1番・川島颯汰

 獨協はピンチを断ち切ればチームが勢いづき、延長戦に入れる。都立小岩はここで決めてしまいたい局面。石山が川島に投じた3球目。この試合で生命線だったカーブがすっぽ抜け、川島の背中を直撃。サヨナラの押し出し死球というまさかの幕切れで都立小岩が3回戦進出を決めた。

 両投手が最後まで投げぬいたこの試合。まさにエースとしての意地と意地がぶつかり合った試合だった。しかし、結果は戸村に軍配が上がった。これは3年生である戸村が最後の夏にかける想いの強さが、2年生の石山をわずかに上回ったのかもしれない。石山にはこの悔しさをバネに、来年夏に3年生エースとしてチームを引っ張る姿を期待したい。

(レポート=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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