享栄vs天白
延長10回、享栄が何とか振り切ったが、天白の健闘と粘りが光る
享栄の双子の三島兄弟のバッテリー
前日から、春の嵐が襲来するという予報が出ていて、愛知県ではこの日予定していた試合の半分が中止となった。それでも、思っていたよりは早く雨も上がり、[stadium]熱田球場[/stadium]は1時間遅れでのプレーボールとなった。
享栄は初回、いきなり嘉名君が右線に落とす二塁打を放つと、バントで送り、二死三塁から4番藤江君の左越二塁打であっさりと先制。
しかし天白も食い下がる。その裏に二死走者なしから、3番湯浅君が左前打すると、続く鹿子島君が右越二塁打してたちまち同点。享栄の柴垣旭延監督は、「球が走っていないし、これではいかんと思った」ということで、初回ですぐに背番号6の先発した加納君を諦めて、2番手として三島 安貴君を送り出して、2回から享栄は双子のバッテリーということになった。
勢いにのっている天白は、その三島安君にも襲い掛かった。3回は一死から当たっている4番鹿子島君が三遊間を破ると、5番則定君があえて送り、二死二塁として、近藤 優樹君の一打は一二塁間深いところで内野安打となり、好スタートを―切っていた二走鹿子島君が帰った。さらに天白は、4回にも内野安打の岡本君を送り暴投で三塁まで進むと、9番山田 渓人君の左前打で帰して3点目。
天白は磯部智洋監督の、手固く送っていく采配が功を奏していた。
磯部監督は、「勝っても負けても、5点前後の戦いになるだろうと思っていた。だから、確実に1点ずつ、取れるときに取っていく野球をやっていきたい」という姿勢で取り組んでおり、そういうひたむきさがこの日の試合にも表れていた。「試す、つなぐ、支える」をモットーとしてやってきた、その要素の一つとして「つなぐ」という姿勢がバントにも表れていたといっていいだろう。
また、岡本君に関しては、「一次予選の時から、ほとんどの試合で投げてきているので疲れがまだ残っていたので、本来の出来ではなかった」と磯部監督は言うが、それでも粘りの投球でよく辛抱した投球だった。そして、岡本君がしっかり投げていかれることで、天白としては強豪相手でも、ついていけば何とかなるという戦いをイメージで来ていたのではないかという印象である。
享栄は8回に中軸の藤江君と早川君の連打とバントで一死二三塁として、7番三島有君の左犠飛で帰して何とか同点に追いつく。こうなるとさすがに、相手にプレッシャーをかけていかれるようになるのだが、天白は10回からはここまで好投していた岡本君が、足が攣ってきたということもあって湯浅君に後退した。
代わった湯浅君に対して享栄は、途中出場で3番に入っていた大原君が中前打で出ると内野ゴロと早川君の左前打などで一死一三塁。6番に入っていた谷口君のスクイズでリードを奪い、さらに三島有君が左越二塁打してこの回2点とした。結果的には、これが決勝ということになった。
延長で2点リードされでも天白は元気がよかった。1番からの好打順で櫻木君が二塁打で出ると、死球もあって一死一二塁となり、鹿子島君の一打は二塁ゴロだったが、併殺崩れとなる間に、二塁走者が思い切って本塁を狙い生還。1点差として食い下がった。最後は、三島安君が何とか踏ん張ったものの、最後まで相手にプレッシャーをかけていった天白の戦いぶりは見事だった。
享栄の柴垣監督は試合後、「打たせて取る投手なのに、守りが大事なところでミスが出てしまっては、いけませんね。最後も、4~6~3と気持ちよく終わらないといけないところなんだけれども、それが出来ませんからね」と、記録に示されない部分でも含めて、もう一つ不満も多い戦いとなってしまったようだった。
印象としては、終始天白の食い下がっていく姿勢が目立つ試合だった。
(取材・写真= 手束 仁)