早稲田実業vs駒大高
この日2本目となる本塁打を放った清宮(早稲田実業)
清宮幸太郎、完全復活を告げる2打席連続弾で駒大高を圧倒!
2015年4月9日、入学式を終えたばかりの清宮幸太郎(早稲田実)が、公式戦のデビューを飾ったのが、駒大高戦であった。あれから2年。主将としてチームのリーダーとなった清宮が、自らのバットで、駒大高を圧倒した。
駒大高の先発は吉田永遠。スライダーを得意とする左腕で、今大会、創価を完封するなど、波に乗っている
1回表、早稲田実の攻撃も簡単に二死になった。ここで打席に入った清宮は3ボール2ストライクの後のきわどい球を見極めて四球。続く4番・野村大樹の内野安打、5番・福本翔の右前安打で早稲田実が1点を先制する。
それでも2回表は、奪三振2で三者凡退に抑えるなど、吉田永遠も並の投手でないことは感じさせた。
ところが3回表の一死後、雪山幹太、清宮に連続四球を出す。微妙なコースもあったがわずかに外れたことで、吉田永遠の投球リズムが狂いだす。そして4番・野村がセンターオーバーの三塁打を放ち、2人が生還。野村も福本の中犠飛で還る。さらに6番・西田燎太が四球で歩くと、7番・橘内俊治が左中間を破る二塁打を放ち、3回表に4点を入れる。
4回表には、四球の走者2人を置いて打席に入った清宮は、2ボールからの3球目、内角の直球を引っ張ると、ライトへの特大本塁打となり、3点を追加。
この大会好投していた吉田永遠も、何かが切れたような状態になり、四球2個に、牽制の暴投、打者のへの暴投と続き、追加点を許す。
一方、駒大高の打撃の特徴は、どのようなカウントでも積極的に、大きく振り上げるようなスイングをすることだ。「基本的にウェイティングはありません。フルスイングです」と、駒大高の川端教郎監督が言うように、それは、大量リードを許した後でも変わらない。
早稲田実の先発右腕の池田徹に3回まで1安打に抑えられていたが、4回裏も初球から打ちにいき、一死後、4回表の途中から登板している駒大高の5番・松原燿一が初球をレフト柵越えの本塁打。さらに二死になった後、7番・吉田勝紀が4球目を左中間柵越えの本塁打にし、追い上げようとした。
しかし、そうした駒大高の追い上げムードを削いだのは、やはり清宮だった。一死一塁で、外角の直球を叩くと、打球は意外に伸びて、センターの柵越えの2ランになった。前の打席に続く2打席連続本塁打。高校通算が、80号、81号となる本塁打だった。
センバツから春季都大会の4回戦までは、公式戦が続いた。4回戦の後は1週間近く空いて、「学校が始まって、いつものサイクルになり、駒大高の1試合だけ意識できるようになった」と、早稲田実の和泉実監督は、清宮復調の理由を語る。
5回裏は、和泉監督が「球に力があるので使いたいと思っていました」と語る大垣洸太が登板。四球を1個出しただけで、無失点で切り抜け、14対2で早稲田実が5回コールドで勝利を収めた。
早稲田実は4回戦まではやや精彩を欠いていたが、ようやく、早稲田実らしい強さを発揮するようになった。
一方敗れた駒大高であるが、この大会は創価、八王子と西東京の強豪を相次いで下し、台風の目になった。「いい経験ができました。手応えはあります」と、川端監督は前向きに捉える。それは、事実上のエースである吉田永遠にしても、チームにしても発展途上で、「伸びしろはあります」(川端監督)という思いからだ。
この試合は打たれた吉田永遠だが、課題として「制球力とストレート」を挙げる。本塁打を打たれた清宮については、「雰囲気がありました」と答えた後、「夏は真っ直ぐで勝負できるよう、真っ直ぐの質を上げたい」と語った。楽しみな投手だけに、さらなる成長を期待したい。
(文=大島 裕史)
(写真=編集部)