れいめいvs出水中央
成長、感じた一戦・れいめい
福永幹也(れいめい)
9回裏二死三塁、一打同点のピンチで、れいめい内野陣がマウンドの河北光生(3年)のもとに集まった。湯田太監督がタイムをとって伝令を送ったのではない。捕手の福永幹也(3年)が自分の判断でとったものだ。
「ここまできたら、最後まで楽しんで野球をやり切ろう!」
福永のゲキに、河北も野手も最後の闘志を燃やす。8番・淵上伊吹(3年)をライトフライに打ち取り、れいめいに20年ぶりとなる九州大会の切符をもたらした。
「最後のアウトを自分たちの力でとれたことに、成長を感じた」
福永は胸を張って言い切った。
今大会、4本塁打の1番・火ノ浦明正主将(3年)が徹底マークにあい、これまでのように打線で打ち勝つ展開には持ち込めなかったが、序盤で好機を着実にものにして先手を取った。
初回の先制点、5回の3点目の追加点は、いずれも先頭の火ノ浦が四球を選び、「火ノ浦がマークされるのは分かっていたから、自分たちで決めてやろうと、4番の堂免(大輔・2年)と話し合っていた」3番・福永が返したものだ。
準々決勝では打ち込まれて途中降板だった河北も、粘り強く投げ抜いた。8回と先頭打者を出し、1点差に追い上げられた終盤、湯田監督の頭にはレフトを守るエース杉安浩(3年)との交代も頭をよぎった。
「河北の目を見て、向かっていく気持ちが出ていたので、続投を決めた」
湯田監督の中には、終盤選手を動かして、試合を崩した過去の苦い敗戦の記憶があった。指揮官の信頼に「思い切りいくだけ!」と河北も覚悟を決める。
「冬の間、誰よりも走り込んで頑張っていたのは河北だとみんなが知っているから、チームも一つになれた」と福永。8回のピンチを1失点でしのぎ、9回は先頭打者にこの試合初めて長打を浴びるが、湯田監督の信頼は揺るがなかった。
一死三塁からの代打・岡田和大(3年)は低めのチェンジアップで空振り三振。河北が「これまでボールが高めに浮いて打たれたり、四球を出すことが多かった」課題を克服し「低めの制球を心掛けた」成長の跡を示した真骨頂だった。
「終盤苦しかった中をよく我慢してくれた。気持ちのある良い子供たちに恵まれた」
湯田監督は20年間破れなかった壁を乗り越えたナインに最大の賛辞を送っていた。
(文=政 純一郎)