試合レポート

稲毛vs横芝敬愛

2014.07.12

春から一変!勝機を呼び込んだ稲毛・小澤勇仁の頭脳的ピッチング!

 夏の面白さは春から別人のような選手、チームへ成長することである。
春の県大会では市立松戸にコールド負けした稲毛は、全く別のチームになっていた。

 稲毛の先発は背番号1を付けた鹿毛ではなく、背番号「2」の小澤 勇仁(2年)だ。春季県大会では6番サードで出場をしていた選手である。

 小澤は非常に工夫を凝らした右投手であった。
小澤はなんと3つのフォームで横芝敬愛打線を幻惑した。基本はスリークォーター。120キロ前後の直球、スライダーを外角中心に集める投球。だが打者の虚をつくようにアンダースローから100キロを切るカーブを投げる。打者はタイミングを取れず見逃すだけ。

 スリークォーターと同じタイミングで投げるので、タイミングが取れない。
ボールを動かす投手なので、横芝敬愛の打者はスライダーに的を張ったり、球速がそれほどでもないので、ゆったりとタイミングを取って待ち構える。稲毛バッテリーは横芝敬愛の打者の狙いを察知して、右オーバーからストレートを投げる。球速的なモノは125キロ前後と決して速くない。ただ100キロ前後のボールに慣れているので、130キロ以上に見えるだろう。そのため打者は手が出ない。

 まさに頭脳的ピッチングという言葉が相応しい。

 横芝敬愛としては小澤のリズムが乗り切れないうちに、なんとしてでも先制を狙いたいところ。
3回表、7番平津 拓海(3年)が左越え二塁打を放つと、一死となって、9番高宮 稜太(2年)の二塁内野安打で一死一、三塁のチャンスを作り、1番多田 智也(3年)が中犠飛を放ち、1点を先制する。さらに追加点を入れたいところだが、後続が続かず1点止まり。

 その裏、稲毛は敵失からチャンスを作り、一死一、二塁から2番泰松 浩大(1年)の併殺崩れと敵失で、同点に追いつく。さらに4回裏には、4番高橋 大智(3年)が四球で出塁し、一死二塁となって、6番金田 晃志(3年)がこの日チーム初ヒットが右前適時打となり、稲毛が勝ち越しに成功する。

 小澤は5回1失点の好投を見せる。


 だが6回表、横芝敬愛は二死一塁で5番石原 稜也(3年)の場面で、一塁走者の小野 祥太(3年)が盗塁に成功。石原はどん詰まりの三塁ゴロ。だが詰まった分、打球が死んで、三塁手が慌てて一塁へ送球するがセーフ。その間に二塁走者の小野が生還し、2対2の同点に追いつく。

 両チームとも走者が出るものの、決定打が出ずに、試合は9回裏へ。

 稲毛は二死から8番古川 達也(3年)が四球で出塁し、9番小澤。
小澤が振り抜いた打球はセンター、レフト、ショートへの中間へ飛ぶ。3人が追いかけ、捕りにいくが及ばず。さらに打球は外野の後ろへ転々。一塁走者の古川はそれを見て、一気に本塁を狙う。横芝敬愛も全力でバックホームをするが、古川の足が速かった。稲毛がサヨナラ勝ちで2回戦進出を決めた。

 今日の戦いは2012年夏拓大紅陵を破った代を思い出すような粘り強さがあった。春季県大会コールド負けを機に変わったのだろう。簡単には倒れない稲毛らしい野球が出来ていた。

 勝利をもたらしたのは背番号2の小澤の好投だろう。
こういう緊迫した場面になると、気持ちが昂って、ストレートを連発しやすい。だが小澤は最後までオーバー、スリークォーター、アンダーの3投法を投げ分け、またストレートには強弱をつけた投球が出来ており、横芝敬愛打線は最後まで小澤を捉えることができなかった。

 最後まで自分の投球スタイルを貫き、実践出来た精神力の強さは素晴らしい。そして自らのバットで勝利を呼び込んだ。強豪校を脅かすような粘り強い戦いを見せることができるのか。

 今年も稲毛の戦いぶりが見逃せない。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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