睡眠とパフォーマンスの関係
より良い睡眠はコンディションの回復とパフォーマンスアップに貢献する
日頃のコンディションを維持するために選手の皆さんはどういったことを心がけていますか? ストレッチや練習後のケアはもちろんですが、その中でも特に心がけてほしいことの一つに睡眠の質を高めることが挙げられます。疲労がたまっているときは十分に休養をとることで、疲労物質の分解・代謝を促し、翌日に疲労を持ち越さないことにもつながります。「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者である西野精治先生によると、睡眠が果たす目的としては、
1)脳と体に「休息」を与える
2)「記憶」を整理して定着させる
3)「ホルモンバランス」を調整する
4)「免疫力」を上げて病気を遠ざける
5)「脳の老廃物」をとる
といったことを挙げられています。脳は使えば使うほど老廃物がたまってくるため、十分な睡眠が必要となってきます。練習においても複雑な動作を行うドリルなどはウォームアップや脳がフレッシュな状態の練習前半に組み込み、練習後半においては反復練習など、ある程度脳が疲弊した状態でも動くことのできる内容にするといったことも考慮すると良いでしょう。睡眠不足の時にケガをしやすいのは、脳の機能がいつもよりも低下した状態にあり、認知機能や判断力が鈍ることによって起こるため。熱中症なども睡眠不足によるコンディション不良がその一因として挙げられます。
また睡眠にはレム(REM)睡眠とノンレム(non-REM)睡眠という2種類が交互に出現します。レム睡眠は「体が休息し、脳は休息せずに働いている状態」であり、記憶の整理などを行っています。記憶では「今日試合に負けてしまった」という事実と「負けて悔しい」という感情が入り乱れていますが、レム睡眠にはこれを切り離す役割があると言われています。「嫌なことは寝て忘れる」とはこのような睡眠の役割を言い当てているものと言えるでしょう。一方でノンレム睡眠は「脳が休息し、体が起きている状態」です。これは繰り返し練習したフォームなど、体が覚えているものを体系立てて整理するための時間であり、「体に覚え込ませる」のはこのノンレム睡眠の時間帯であると言われています。
睡眠には疲労回復を促すだけではなく、脳のリフレッシュやパフォーマンスアップに必要な記憶の強化、感情の整理など、野球が上手くなるためにも必要不可欠なもの。十分な睡眠時間を確保する、睡眠の質を高めることは野球選手にとって大切であることを理解しておきましょう。
文:西村 典子
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