仙台二(宮城)データ野球で半歩でもリードを奪い、強豪私学相手に打ち勝つ!
JR仙台駅から地下鉄に乗り換え、わずか9分のところにある国際センター駅。心地よい風と、道沿いの木々から僅かにこぼれる柔い日差しを浴びながら歩いて行った先にあるのが、宮城県仙台第二高等学校、通称仙台二高である。
ゴールデンウィーク間近、校門には定期交流戦までのカウントダウンの看板が置かれていた。仙台二野球部では恒例行事として、毎年仙台一との練習試合が組まれている。伝統校でもある仙台二の選手たちは普段、どんな練習をしているのか。お話を伺った。
効率化に特化した練習
仙台二の選手間ミーティングの様子
グラウンドが他の部との兼用であることから、全面を使っての練習はできない。さらに仙台二は県内でも有数の進学校で、授業が7時間目、さらには8時間目まである曜日もある。授業の時間が長いだけでなく、練習時間も限られている。
場所・時間の両方が制限されており、練習環境は私学に比べると満足の行くものとは言えない。だが、選手・監督は限られた環境の中で創意工夫を凝らしている。
実際に学校を訪れた際には、校舎内でバドミントンのシャトル打ちと、自転車置き場でのティーバッティングや体幹トレーニングなど、できる範囲で工夫をして練習をしていた。練習に取り組む選手も、効率化を図る意識が強い。チームの中心選手である、酒井渉選手がその意図を話した。
「自分たちの学校は授業の時間が長く、練習時間にも制限がある。でも、私学は人数が多いから練習時間が長い」と感じている。ノックを受けるのを待っている。また、バッティングの待ち時間など人数が多いからこそ、練習時間が伸びていると酒井は考えている。
また練習時間を伸ばせば、上手くなる保証がないと選手たちは考えている。大事なのは、いかに高い集中力で効率よく練習に取り組むか。そこに重点を置いた仙台二は、一日練習できる土日であっても敢えて練習時間を短くして、高い集中力を維持したまま効率化を図っている。
仙台二は、宮城県の中部地区に属する。そこには全国でもその名が知られる、仙台育英に東北と強豪が所属する地区なのである。それだけに私学に対するライバル心はかなり強く、どうしたら彼らに勝てるのかということを常に考えている。そのために必要なのが、バッティングの強化だった。
[page_break:強豪相手に打ち勝つ!]強豪相手に打ち勝つ!
練習後の整備の様子
昨年春の中部地区戦準決勝では仙台育英と対戦。結果は7対0で敗戦してしまったが、その時に自分たちに必要な課題が見えてきたと語る酒井。
「自分はケガをしていてベンチで応援するしかできませんでしたが、あの時はピッチャーのレベルの高さを感じました」。
特に公立校のピッチャーではなかなか見られないようなストレートの伸びに、自分たちの課題があった。
また「私立相手に守り勝つのは正直難しいので、バッティング勝負に持ち込むべきだと感じました」と話し、ストレートと変化球に対してどうやってアプローチをかけるかについて考えていきたいと酒井は感じていた。
冬場は、140キロくらいを投げてくる投手を打ち負かすために、チーム全体でスイングスピードの向上を図った。
その成果が今年の春に開花する。中部地区予選の1回戦で対戦した東北はストレート中心の配球だったが、好投手・葛岡仁から10安打を放つことができた。
バッティング強化の成果は出たが、得点は1点のみ。夏に向けては、いかに得点力を上げるかという新たな課題に取り組んでいる。
そんな仙台二を象徴するのが、データである。バッターの癖やバッテリーの配球などを分析し、事前に相手の情報を頭に入れておく。進学校・仙台二の頭脳が大いに発揮される部分だ。
この成果が一番発揮されたのが、昨年の春の中部地区予選2回戦での仙台商戦であった。「事前に相手の癖を知っていたことで、仙台二不利だと思われた試合を勝利することができた」という試合だった。
この時に、相手のことを分かったうえで戦うことで余裕が生まれた。こうして事前準備の大切さを身をもって体感した。
「理想はそういったデータなしで勝つこと」だと酒井は語る。しかし、そうはいかないことの方が多い。そんな時にはデータが役に立つ。相手より半歩でもリードできることで、アドバンテージを持って試合に臨めるからだ。
こうしたアドバンテージを持って夏に臨む仙台二。強豪私学相手に、どのような試合をこの夏は見せてくれるのか。注目していきたい。
(文・写真=編集部)