姿勢を見直してケガを予防しよう
野球に必要な回旋動作をスムーズにするためにもよい姿勢を保つことは大切
野球で起こる肩や肘の痛みは、その多くが肩や肘そのものに問題があるというよりも、体の使い方や負荷のかかり方によって筋力的に弱かったり、関節可動域(関節の動き範囲)が極端に少なかったりする部分(=肩や肘)にストレスがかかり続けて傷めてしまうケースが多いものです。いわゆる「野球肩」「野球肘」と呼ばれるケガは、ケガをもたらす要因を把握した上で、その部分を改善していくことから始める必要があります。そして筋力、柔軟性などの体力要素、フォームなどの体の使い方とともに見直したいものに姿勢が挙げられます。
崩れた姿勢と聞いて思い浮かぶのは、頭が前に突き出て、背中が丸まってしまう「猫背」ではないでしょうか。スマートフォン(スマホ)の利用が日常生活に溶け込み、小さな画面を長時間のぞき込むことが「当たり前」になりつつありますが、このような姿勢は背中や首の筋肉を緊張させて、正常な脊椎のS字カーブを保てなくなり、姿勢が崩れる一因となります。また長時間座りっぱなしでテレビ画面を見続ける、もしくは勉強に集中して頭がどうしても前に倒れ込んでしまうといったことによっても背中が張ったり、首がだるくなったりします。
猫背の状態は投球動作にも影響を及ぼします。たとえば猫背のままバンザイするように腕を挙げようとしても十分な可動域が確保できませんが、猫背をただして同じ動作を行ってみると腕をしっかり挙げることができるのではないでしょうか。このように猫背の状態では肩関節の可動域が狭くなってしまうことが考えられます。また、もともと投球動作ではボールを投げるたびに投球側の上腕骨頭は動きに合わせて自然と前方に移動するため、肩が少し前に入って背中が丸まった状態になりやすくなります。それを改善するために肩甲骨を引き寄せて肩の関節可動域を確保する必要があるのですが、背中や首、肩の後方部が硬くなってしまうと、こうした動作もできなくなり、結果的に無理な体勢で投げ続けようとして肩や肘を傷めることになります。さらに背中が丸まった状態では野球に必要な回旋動作がスムーズに行えません。特に回旋動作に必要な胸椎を十分にひねることができず、他の部位で代償をさせようとするため、わき腹を痛めてしまったり、腰椎を痛めてしまったりといったことも起こります。
投球動作によるケガをなるべく避けるためにも、普段の姿勢を見直してみるというのはとても大切なことです。下を向いている時間が長かったのであれば、少し休憩をとって肩や首、背中周辺部のストレッチを行ったり、大きくのびをして体全体を伸ばしたりといったことをセットにして習慣にすることを心がけましょう。
文:西村 典子
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