各界に著名人を多く輩出する進学校・半田は1日300スイングとストレッチを約束事として「新しき潮」を待つ
半田高校
3月20日過ぎくらいからは、1日2時間を上限という時間決めで練習はやれていたという半田。これは、進学校ながら比較的部活動が盛んな半田の場合、他の部活動も同様で時間決めで練習していたという。その間の練習では、野球部もボールを握っての練習はやれていた。だから、新しいシーズンに入ってボールの感触を経験はしている。とはいえ、試合形式での練習というのは、時間的制限もあったということで、あまり進められていなかったようだ。
学校としては入学式だけは何とかやれたものの、翌日からは休校ということで出校日にしか登校していないというのが現実となった。
「新入生に関しては、何人入って来てくれるかということもわかっていません」
今季は1年生の担任でもある後藤浩介監督は、現状の中で何も出来ていないことに対してのもどかしさは隠しきれない。教員という立場からも、自分が担任する生徒たちに対しても、まだ顔と名前が一致していないというのが初時期なところだという。入学式の比に簡単に顔合わせはしているものの、「全員がマスクをしていましたから、なかなか顔はすぐに覚えられませんよね(苦笑)」というのは本音だろう。
それでも野球部監督としては、選手たちに対しては、主将とは連絡を取り合いながらも、その状態を把握している。
選手たちは、自分たちで最低限のノルマを決めて、原則として「素振り300本、ストレッチ10分」ということを決めている。そして、それを主将を中心としてそれぞれで連絡を取り合いながら進めていくという姿勢だ。
「3月に一度自粛で中止になったのが、20日過ぎになって一度練習再開で始めたときに、そんなに動きが悪くはなかったので、選手たちはそれぞれでしっかりと練習して準備きていたんだなと思った。だから、再度自粛になったけれども、大丈夫だと信じている」
選手たちに対しての信頼も示している。
「選手たちは各自で、(大会が)あると信じています。先日も、部室に荷物を取りに来た者がいたんですが、その時にちょっと話したのだけれども、意識はしっかりと前を向いていたので大丈夫だと感じた」
そんな感触だという。
一宮から筑波大を経て、新任で半田に赴任して、今年26歳というまだ若い後藤監督。もし8年前の自分が現役選手だった時に、この状況だったらどうだったのかということも聞いてみた。
「うーん、難しいですね。切り替えようということは思うでしょうけれども、簡単には切り替えられないかもしれない。それでも、現実としてどう受け止めていくのかということは、考えていたかもしれません」
そんな正直な気持ちも語ってくれた。
現状では、新入部員が何人入ってくるのかもわからない。入部登録さえもまだ終わっていないという状況である。そんな状況のまま、新入生たちも2カ月を過ぎていくことになるのは必至だ。
「教員としても、3カ月授業していませんからね。もちろん、こんなことは初めてですから、戸惑っています。1年生は、課題はあるでしょうが、高校の勉強の仕方もわからないままですから。3年生は、センター試験までの間でどこまで進められるかというところもあると思います。それでも(自分で勉強を)やれる生徒はやるのではょうが、理科や社会は、果たして試験までに全部授業が進められているのかというところもあるかと思います」
進学校の教員としては、そうしたことに関しての気遣いもある。
ただ、ここまで頑張ってきた3年生たちに対しては「何らかの形で区切りはつけてあげないといけない」という思いは強い。知多地区の指導者たちからもそんな声があるが、愛知県高野連の役員で阿久比球場の球場主任でもある石黒薫顧問には、そんな相談も多く来ているという。コロナ禍明けには、きっと新しい流れがくると信じている。
「3年生たちに対しても、何とかしてあげたい」
これは、今、高校野球に関わっている指導者たちのすべての思いであることは確かである。私の母校でもある半田高校。
「朝明けの 衣が浦に 眉上げて 若人われら 新しき潮を待たむ」(校歌より)
後輩たちの頑張りに期待したい。
(文=手束仁)
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