昨秋4強の川口市立を率いる監督の想い「いろんな声がある中で選手を守るのが指導者の役割」
川口市立ナイン(※写真は2019年秋季埼玉県大会)
新チームがスタートして挑んだ昨秋の大会で快進撃を果たした川口市立。南部地区大会を勝ち上がり出場した県大会でも、春のセンバツ出場を果たしていた春日部共栄を下すなどしてベスト4に進出。公立校で唯一のベスト4となった。
「よく、ベスト8の壁なんていうことを言いますけれども、やはりベスト8とその先のベスト4では大きく違います。そのベスト4進出を果たして、いいモチベーションで冬のトレーニングへ入れて、春のシーズンを迎えられたと思ったんですけれどもね」
鈴木久幹監督はそう言って、今春の自粛による大会中止を残念がった。
「もどかしくて、残念でしょうがないですよ」
というのも、正直な気持ちであろう。
結局3月以降は、グラウンドも閉まったまま。ほとんど何もやれていないという状況は他の公立校と変わりはないようだ。
連休に突入するこの時期、本来ならば練習試合も多く組まれていたところだろうが、当然のことながら5月の練習試合はすべてキャンセルとなった。ただ、6月にはどうなるかわからないという前提で、予定のキャンセルは1週ずつ確認しながら潰していくことにしているのだという。
「やはり、(大会を)やれるという前提で考えていかないといけないと思っていますから。その可能性を残しておいて、そのための準備としての練習試合ですから。ダメだなというところで一つずつキャンセルの連絡をしていくということにしています」
そういう思いで日々を過ごしているという。
川口市立の場合は、LINEなどでグループを作ってのメッセージトークは生徒たち同士で交換しているものの、特に定期的に連絡を取らせるということはあえてしていないという。それは、「特に、無理やり管理しなくてもいいし、自覚の持てている生徒たちだから」という鈴木監督の信頼もある。
ただ、このままの状態が続くとなると例え6月から授業が再開されたとしても、部活動としての動きは6月中旬くらいにまでずれ込んでしまうのではないかと見ている。それも、しばらくは1時間から、せいぜいに時間程度までということになってしまうのではないかということである。
また、再開したとしても気にしているのは、インターハイの中止が発表されたということで、他の部活動では実質3年生が活動の場がないまま引退を余儀なくされてしまっているというところもあるということだ。
3月になって、選手たちと会ったのは2回の登校日と終業式の日だけだったという。新入生に関しては全然会っていないという。体験入部に来て名前を書いてある新入生に対して、3月26日に電話をしたのみにとどまっているという。
「実際、(大会開催か否かの決定を)ギリギリまで待つという形になったとして、そうしたら選手たちは、やれるという前提で練習に向かっていきますよね。そうすると、周囲からは『どうして野球だけは、いいんだ』とか、そんな批判も向けられてきます。
そんな声が、生徒たちに向けられてきたら、そこからも守ってあげなくてはいけないというのも我々指導者としての役割としてはあります。コロナから生徒を守るということはもちろんなんですけれども、むしろ、そんな外からの非難や批判からも守ってあげるということの方が、とても大変なことかもしれません」
教員としての立場から考えると、夏休みそのものが、お盆の1週間くらいになってしまって、夏休みを潰しながら、何とか授業をこなしていくという形になるのではないかと考えている。
それに、選手個々のことで言えば、いかに自主的にトレーニングを重ねてきているとはいえ、やはり体力は落ちているということは否めない。だから、炎天下の試合となって、その夏の暑さに耐えられるのかどうか、というところもあるだろう。そんなところも配慮しながら、現実に(大会そのものが)出来るのかどうかということも考えていかなくてはいけないという。
それでも、どこかで1回は、21人の3年生たちが揃って、このメンバーで試合をさせてあげたいというのは、野球部監督として、教員としての心からの願いである。
(文/手束仁)
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