東京大が鹿児島キャンプ開始!地元・鶴丸出身の2選手が語る「東大を目指す意味」と「東京大六大学の魅力」
武隈光希(左)と櫻木隼之介(右)
東京大の鹿児島合宿が3月3日から鹿児島市の[stadium]鴨池市民球場[/stadium]で始まった。地元・鶴丸出身の武隈光希(4年)、櫻木隼之介(3年)にとっては高校時代、夏の選手権予選などの公式戦を戦った思い出深い場所でもある。6日には同球場で鹿児島大との交流戦(※無観客試合)も組まれている。鹿児島大にはかつてのチームメートも所属しており「試合を楽しみにしている」と2人。故郷の地で今季の飛躍を誓う2人の意気込みを聞いてみた。
今年は鹿児島出身で東京帝大卒の中馬庚氏がベースボールを「野球」と名付けて125周年に当たり、鹿児島大が創立70周年を迎えることから、武隈の父で同大野球部長の武隈晃さんらが中心になって「日本野球誕生125周年中馬庚先生記念試合」を企画し、対戦相手として東京大を招待した。東京大は2月18日から約2週間の福岡合宿を経て、鹿児島にやってきた。
「思い出深い場所ですねぇ」
武隈は感慨深げに振り返った。思い出すのは高3だった15年の夏、4回戦で鹿児島と対戦し、4回まで0対6のコールドペースのビハインドから7点を返し劇的な逆転勝利で8強入りした試合だ。1つ下の櫻木も同じ試合に出ていたが「苦い思い出もあります」と苦笑する。1年後、櫻木が最後の夏、2回戦で国分中央に何もできずに0対14で7回コールド負けの惨敗を喫したのもこの球場だった。様々な思い出が詰まった球場で、大学野球の鍛錬ができることに不思議な縁を感じていた。
2人とも「東大で野球をやる」ことが受験勉強のモチベーションだったという。
高校最後の夏に8強入りした武隈だったが、中軸打者としての活躍が期待されながら不振のままで終わったことに強烈な後悔があった。「野球で人を感動させるような選手になりたい」と思ったとき、東京6大学リーグが選択肢で浮かび、その中でも「自分がレギュラーになれる可能性が最も高い」と思った東京大を目指した。現役では不合格だったが、一浪して目標をクリアした。櫻木も最後の夏の惨敗がモチベーションだった。こちらも現役不合格だったが、武隈や2学年上で今年卒業する濵﨑貴介が一浪して合格したのを見ており「流れができていた」。
練習中の武隈光希(鶴丸出身)
東京大での野球生活は「目指す価値のある場所だった」と武隈は言う。大学野球の聖地・神宮球場であるリーグ戦は最低でも3000人、多いときは1万人を超える観衆が集まる。なかなか勝てないが毎試合応援団が駆けつけ、惜しみない声援を送ってくれる。ネット配信なども充実していて、大学野球界での注目度はトップクラスだ。「応援されることが当たり前にある環境」(櫻木)は間違いなく大学で野球を極めようとするモチベーションになっている。対戦する相手はプロ注目の選手や、甲子園出場経験のある猛者がそろう。「全てが恵まれた環境にある。あとは結果を残すだけですね」と武隈は苦笑した。
東京大は現在、リーグ戦42連敗中。武隈が1年秋に法政大から勝ち点を挙げて以降、勝ち星がない。3、5番の中軸で外野もしくは一塁を守る武隈は「打撃長」としてチームの攻撃のリーダー役だ。140キロ前後の直球なら対応できるが、「145キロを超えると全く打てていない」と分析し、マシンの球速を145キロ以上に設定するなど、まずは球威のある直球を打ち返せるようになることを目標に掲げる。「今年は投手陣が昨年より落ちるので、打撃陣の奮起がカギを握る」と櫻木も感じている。
連敗ストップのためにライバルチームを分析すると「昨秋日本一の慶応大は別格だが、他のチームには勝てる力は持っている」と武隈は感じている。四死球やエラーで自滅する試合が多くあり、「自分たちから崩れないようになること」がこれからリーグ戦までのテーマになる。
外野手の櫻木も打撃が持ち味だが、1年冬に左肩を脱臼して以降、脱臼癖がついてしまい、昨年4月末に手術して昨季は全く試合に出られなかった。昨年12月にようやく練習に復帰できるようになり、間に合わなければ今回の合宿にも参加できず居残り組になるところだったが「ようやく間に合って、スタートラインに立てた」と安どする。前日の中央大のオープン戦では復帰後初ヒットも放ち、自信を取り戻しつつある。
先輩・武隈と同じ外野手であり、トップチームで生き残るためには代打で結果を出すことに活路を見出す。「1球目からしっかり打てること」を練習から意識する。チームの連敗脱出のカギは「自信を持つこと」だと言う。そのためにも「オープン戦からしっかり勝つことを意識していきたい」。
6日に対戦する鹿児島大には武隈と同級生の山田拓人、櫻木と同級生の有木和也、有村祐太、東翔大がいる。かつて勝利の喜びも敗戦の悔し涙も共にしたチームメートと、高校時代と同じ球場で真剣勝負ができる機会は「多分、もう2度とないと思う」(櫻木)。だからこそ「勝ちにこだわりたい。リーグ戦直前並みに仕上げてきました」と武隈は張り切っていた。
(記事=政純一郎)
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