DeNA石川雄洋が母校へエールを贈るかのような一撃
3月に行われた選抜高校野球でもプロ注目の左腕・及川雅貴を擁し注目を浴びていた横浜高校が春季関東大会に駒を進めることができなかった。神奈川県大会準決勝で桐光学園高校に敗れたためである。
最後の夏へ向け不安が募るなか、同校のOBがプロ野球の世界で復活を見せつつある。まるで、母校へエールを送るかのように。
値千金の勝ち越し本塁打
DeNA石川雄洋
この男の復活を待ち望んでいたファンは多いだろう。DeNAの石川雄洋である。
2004年ドラフト6巡目で横浜高校から横浜ベイスターズ(現・DeNA)へと入団。同期には涌井秀章(西武1位/現・ロッテ)がおり、石川の注目度はそれほど高くはなかった。
2年目から活躍した涌井に対し、石川は高卒5年目となる2009年には134試合に出場し初めて規定打席へ到達。翌2010年には打率.294(521打数153安打)、36盗塁と順調にステップアップ。その後も2014年まではほぼレギュラーとしてプレー。チームに欠かせない存在だった。
今シーズンも二塁のポジションは強打のネフタリ・ソト、そして柴田竜拓や中井大介が守る機会が増え、石川は二軍スタート。故障しているわけではないのにもかかわらず、である。
その二軍でも4月26日までに打率.267(45打数12安打)と飛び抜けた成績を残しているわけではなかった。しかし、チームが10連敗のどん底にいる4月29日に一軍へ合流することになる。何かを変えることの出来る存在として、その日に即スタメンのチャンスをつかむ。
期待感はあるものの、近年低迷しているベテラン手前に加え今季の一軍初戦。相手は首位を走る巨人、そしてビジターとなる東京ドームだ。大きな成果が残せるような条件は揃っていなかった。
しかし、この男にそんなことは関係なかった。そのすべてをひっくり返す猛打賞に値千金の勝ち越し2点本塁打の大活躍である。ヒーローインタビュー時にはスタンドで涙するものの姿も。
チームの連敗を10で止める一振りは「まだ、やれるぞ」という意地にも見えた。どん底から這い上がってきた石川がチームを引っ張っていく。
文=勝田聡