試合レポート

中部商vs八重山商工・宮古工

2017.03.23

152Kmの平良海馬。15奪三振の中濱太洋。観ている者を惹き付けるベストゲーム

中部商vs八重山商工・宮古工 | 高校野球ドットコム

中濱太洋(中部商)

 沖縄県の高校野球史に新たなページを刻む可能性を持つ選手。それが八重山商工平良海馬だ。昨年秋に145kmをマークした平良がさらに伸びているのかどうか。それをひと目見たいファンは大勢いたが、部員不足という壁が春の不出場をはらんでいた。しかし沖縄宮古工・佐久原監督と八重山商工・末吉監督、それにナインたちが連合チームとして出ることに同意。海を隔てた難しい環境の中での船出だったが、連合チームはこの日、出来ることを精一杯やってのける素晴らしい戦いを見せてくれた。

 先制したのは選手個々の能力に勝る中部商。2回、6番前田亮がライト前ヒットで出塁すると犠打で二塁へ。8番町田優気の当たりはセカンドへ。しかしエラーしてしまい、その間に前田が本塁へ生還した。3回以降は、平良の前に三者凡退の山を築いてしまっていた中部商だったが8回、先頭の3番知念侑輝が左中間を破る三塁打。続く徳田大夢がキッチリとセンターへ犠牲フライを上げて欲しかった追加点を奪った。

 投げては中濱太洋が、平良に勝るとも劣らないピッチング。球速表示では勝てない平良に対する、並々ならぬものを感じたのは、その平良が打席に入ったときだ。1回一死一塁での平良、3回は無死満塁での平良を迎えた中濱は、連続して空振り三振を取ってみせた。8回を終えてヒットは僅か1本のみ。130km後半のストレートは低めをつくだけでなく角度を保つ。付け入る隙は無いように思えたが9回、連合チームに風が吹く。


中部商vs八重山商工・宮古工 | 高校野球ドットコム

徳元亮真(八重山商工)

 先頭の仲間里樹がセンター前に運び平良へ繋げる。2点のリードを持つ中部商としては、無理に勝負に行くところでもない。平良を避け、3三振を奪っている松川竜二との勝負へ。しかし、ここで連合チームベンチから好采配が出る。送りバント。二・三塁とプレッシャーをかけると5番徳元亮真の当たりはサードへ。突っ込みとグラブが打球と僅かに会わず、記録はエラー。二者が生還したが、連合チームの思いが乗った打球だからこそ起きた土壇場での同点劇と言えただろう。

 感動を生んだ連合チーム。しかし、ここまでだった。10回、「僕の送球ミスで。僕のせいで負けてしまった」と試合後の平良。バント処理をしたものの、二塁へフィルダースチョイス。その後もピッチャーゴロを二塁へ放るも、野手とのタイミングが合わず送球が逸れる間に中部商に決勝点が入った。

 タテジマのユニフォームで力のある先輩たちとプレーしてきた平良だからこそ、連合チームならではの党内連携プレーが出来ない難しさがあった。それゆえの悪送球だったと、ここは思おう。商業高校野球大会、そして最後の夏。心が成長した平良を楽しみに待っていたい。

 勝った中部商は、6回に最速152kmをマークした平良のストレートと130km後半のチェンジアップ(だろうか)に苦しめられたが、やってきたその対策が実ったゲームだったと言えよう。何より10回を投げて15奪三振をマークし、平良に勝るとも劣らないピッチングを披露してくれた中濱の躍動に、この先への期待が高まる。
何はともあれ、平良と中濱の投手戦と連合チームの意地が見られたこの試合は、2017年の沖縄県高校野球ベスト5に間違いなく入る好ゲームであった。

(文・写真=當山 雅通

中部商vs八重山商工・宮古工 | 高校野球ドットコム
注目記事
2017年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.08

平成国際大の新入生は逸材揃い!帝京&茨城4強右腕、日本文理の遊撃手、高校通算20発以上の強打者らが加入!

2024.05.08

4連覇狙うオリックスの起爆剤へ! 二軍で輝く3選手

2024.05.08

古豪復活! 42年ぶり春季神奈川優勝の武相、背景にあった「徹底的な打力強化」と「9イニング勝負」

2024.05.08

筒香嘉智の復帰即逆転3ランにベイOBも興奮!二軍の打率1割台でも力を発揮できた理由とは!?

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.03

【埼玉】春日部共栄の「反撃」なるか、5年ぶりの関東切符狙う<春季県大会>

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.03

【春季埼玉県大会】山村学園の打線が爆発!エース西川も好投!立教新座を一蹴し準決勝進出!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>