通算31本塁打の強打の捕手・松川虎生(市立和歌山)が誕生するまで【前編】
世代NO.1投手との呼び声高い小園 健太の活躍に注目が集まるが、女房役・松川 虎生も世代を代表する大型スラッガーだ。
貝塚ヤング時代は小園とともに第26回ヤングリーグ選手権大会で全国制覇を経験したスーパー中学生だった松川は身長178センチ、体重101キロという大きな身体を存分に使ったフルスイングで高校通算31本塁打まで記録。
そして捕手として二塁送球は最速1.9秒という数字を残しており、「打てる捕手」としてラストイヤーの活躍に期待が高まっている。
中学時代のバッティングのポイントは2つ
そんな松川の野球人生は小学生から。最初は軟式野球のクラブチームに入っていたが、「中学では硬式をやることを考えていましたので、入団を決めました」という泉佐野リトルに小学5年生になったタイミングで移動。主に内野手を務めながら硬式に徐々に慣れていった。
そして中学校へ進学すると、松川は貝塚ヤングへの入団を決意。監督は東京ヤクルトの川端 慎吾(市立和歌山商 現市立和歌山出身)の父である末吉さんが務めていることでも有名なチームだが、ここで本格的に捕手としてスタートさせる。上達のために様々な捕手の動画を見たという。
「キャッチャーの練習動画や、当時は炭谷 銀仁朗さんや伊藤 光さんのキャッチングなどを見て、チームの練習があるときに実践するようにして、キャッチャーとしてのスキルを伸ばしていった感じです」
ただ貝塚ヤングではバッティングに時間を割くことが多く、守備以上に打撃の能力が伸びていった。そんな中で大事にしてきたポイントは2つだった。
「よく言われたのは自分のポイントで打つこと。あとは軸足で回転して打つことは、よく言われていました」
この教えを胸に松川は打者としての能力を開花させ、中学3年間で23本塁打を記録。3年時には主将としてチームを牽引して全国大会に出場。
決勝戦のヤング和歌山ビクトリーズ戦ではサヨナラ打を放ち、優勝に導くだけではなく、大会最優秀選手賞を受賞するなど、確かな実績を積み重ねて、市立和歌山の門をたたいた。
[page_break:通算31本塁打スラッガーの打撃理論]通算31本塁打スラッガーの打撃理論
全国制覇をした主将として多くのチームから誘いもある中、「公立校として日本一、という目標を掲げる市立和歌山の一員として戦いたかった」ということで松川は市立和歌山への進学を選択。中学時代からバッテリーを組む小園ともに日本一を目指す日々をスタートさせる。
すると、入学して間もなくベンチ入りを果たすと、智辯学園との練習試合でホームランを放つなど、持ち前のバッティングで存在感を発揮。そして4月下旬には4番・サードのとして公式戦にスタメン出場を果たすなど、これ以上ないスタートを切る。
「先輩方からは『俺らがいるから任せておけ』と声をかけてもらいましたので、気楽に打席に入れました」と1年生4番としてのプレッシャーと戦っていた松川だが、決勝の智辯和歌山戦で高校野球の壁にぶつかった。
「あの試合ではインコースをかなり攻められて、なかなか自分のバッティングをさせてもらえませんでした。ですので、そこからトップの位置やタイミングの取り方を中学から変えて対応しました」
構えそのものを脱力させつつ、インパクトまでの無駄な動きを減らすことを目的に、中学時代の時よりもトップの位置を下げたという松川。そうしたことで、インコースへの対応力にも磨きがかかり、課題を克服していったとのことだ。
そんな松川は31本塁打を記録しているが、大きく足をあげているバッティングフォームが印象深い。タイミングの合わせ方は人それぞれだが、松川にはどういった狙いがあるのか。
「自分の中ではあまり大きく上げているつもりはないのですが、高く上げ過ぎてしまうと前に突っ込んでしまうところが課題です。ですので、構えている段階から8割くらい重心を乗せてあげて、あまり上げ過ぎずにタイミングを取ることは意識しています」
また開きを抑えるためにも、つま先から着地させるなど下半身の使い方だけでも細かな部分まで意識をしている松川。しかしそれは、「下半身を使って打つことが大事なので、割れや粘りを作ってあげて上半身はついてくるようにしています」と下半身主導のフォームを心がけているからだ。
ただ全く上半身の使い方を考えていないわけではない。松川の中では「最短でバットは出すのですが、ボールの軌道に入れるようなスイングを心がけています」とレベルスイングでライナー性の打球を飛ばすことを意識している。
貝塚ヤング時代に指導された軸で回転することを意識しながらも、どれだけ全身を使って無駄の少ないフォームでボールを捉えるのか。これを突き詰めた結果が、松川のバッティングを作り上げることに繋がった。
(記事=田中 裕毅)
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