Interview

この夏、完全覚醒へ。自己分析できる大器・西舘勇陽(花巻東)

2019.07.04

 今年の岩手県は163キロ右腕・佐々木朗希大船渡)に注目が集まるが、花巻東にもドラフト候補として注目すべき大器がいる。その名は西舘勇陽(ゆうひ)。184センチ80キロと恵まれた体格から投げ込むストレートの最速は148キロ。夏には150キロ超えにも期待がかかる。岩手のライバルを抑え、2年連続の甲子園を狙う西舘の歩みを夏にかける意気込みを訊いた。

地道な取り組みで高校入学半年から13キロもスピードアップ!

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西舘勇陽(花巻東)

 西舘が野球を始めたのは小学校3年生から。投手人生のスタートは小学校5年生からで、一戸中も投手を続けた。中学3年生になって身長が伸び始め、高校入学時には180センチに達する。そして花巻東に進学した理由については、菊池雄星大谷翔平の存在があった。

 「小さい頃から甲子園をずっとみていて、甲子園に行きたいと思っていましたし、甲子園に一番近い高校が花巻東でした。そして菊池さん、大谷さんの活躍を見て、そこで成長したいと思いました」

 実際に入学して、人間教育が素晴らしいチームだと実感した。
 「佐々木先生、部長の流石先生から、人間として大切なことをいろいろ教えていただきまして、花巻東に来てよかったと思います」

 そして1年夏からベンチ入りを果たすが、それは中学3年から取り組んできた周到な準備があった。
 「中学3年生から身長が伸びていく中で、まだ体重が軽く、このままではいけないと(考え)、食べたりしながら体作りをするようになりました。また、軟式から硬式に移行するので、中学3年から硬式の練習は継続的に行ってきました」

 入学後は、Bチーム、Cチームの試合で投げながら、佐々木監督の指導を受けて、成長した姿を認められ、いきなりベンチ入りにつながった。1年夏では登板はなかったが、夏の雰囲気を感じ取り、貴重な経験となった。

 1年秋から少しずつ登板の機会が増える。
 「1年夏の経験をしっかりと活かそうと思いました。ベンチ入りできなかった先輩方の分まで頑張ろうと思いました」

 1年夏から継続的に取り組んできたフォームの修正や体作りが実を結び、1年春の最速127キロから13キロ速くなり、140キロに到達。レベルアップした投球を見せるようになり、東北大会準々決勝の由利工戦で2失点完投勝利を挙げた。

 「あの試合では打者の反応を見ながら投げていて、後ろを先輩方が守っていて、気持ち的にも余裕がありました」と快投の要因を振り返る。

 この東北大会では準優勝を収め、その実績が評価され、センバツ出場。大阪桐蔭戦で甲子園初登板。さらに2年夏も甲子園に出場し、下関国際戦でリリーフ登板。結果としては満足していないが、貴重な経験となった。そして新チームへ向けて決意を新たにした。

 「ベンチ入りした同級生のメンバーと一緒にチームを引っ張っていこうと思いました」

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[page_break:2年秋の屈辱を力に変えて、覚醒の兆候を見せた春]

2年秋の屈辱を力に変えて、覚醒の兆候を見せた春

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八戸学院光星戦での西舘勇陽(花巻東)

 しかし2年秋は苦しい期間が続いた。2年連続のセンバツ出場を目指して臨んだ秋季東北大会では3試合に登板したが、8.1回を投げ、12失点(自責点12)と、悔しいピッチングに終わる。
 「秋は思うような結果が出ずに悔しい思いをしましたので、自分がやらないといけないと思って取り組んできました」

 冬の期間では、秋に出た課題に向き合った。
 「やはり秋の大会でもピンチの場面で粘れなかったこと。気持ちが先走って、力んでボールが走らず、ピンチの場面でも冷静さを持って投げることが大事だと思いましたので、冬場、花巻球場の室内練習場を借りてのピッチングではその課題に向き合いました」

 ウエイトトレーニングでは、下半身中心に強化。投球フォームについても見直しを行った。
 「秋は上体だけで投げていたところがありましたので、体重移動の部分を見直しをしました。軸足(右足)に力を溜めて、そして踏み出した時に左の股関節にねじ込む意識で投げることを意識しています」

 また鍛えた肉体をフルに活かすために、左手の使い方も見直している。取材日は左手にチューブを掴んで腰を回す練習をしていた。
 「踏み出してから、左手のグラブを伸ばしてから胸に戻す際の力を上手く使って、その力をしっかりと投球につなげていければと思っています」

 投球フォームの修正がうまくいき、さらにオフから継続的に取り組んできたトレーニングの成果もあり、最速は147キロまで伸びた。
 「指にかかるストレートは多くなっていると思いますし、ピッチングにも余裕が出てきました」と手応えを感じている。

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西舘勇陽(花巻東)

 またピッチングの幅も広がった。これまでは120キロ台のスライダーが中心だったが、125キロ前後のフォークもしっかり決まり、空振りを奪えるようになっている。
 「全部が全部抑えにいくのではなくて、カーブを使ってカウントも取れるようになって、そういう部分でメリハリがついた投球ができるようになりました」

 6月上旬に行われた東北大会は、収穫と課題を残す大会となった。東北学院戦で、7回表からリリーフで登板。7回表に一挙4失点を喫したが、8回以降は5者連続三振を奪った。
 「最初の打者にポテンヒットを打たれ、なかなか切り替えられずにその後、失点してしまったのは反省点でした。でも、チームメイトから『ここから切り替えてやっていけ』という言葉をもらってから、自分の中で切り替えることができたので、五者連続三振を奪う事ができたと思います」

 夏へ向けての課題はピッチングのスキをなくすこと。
 「やはりピンチの場面でも、動じないピッチングをすること。チーム全体として取り組んでいるのですが、取り組みなどを見直して、スキのないピッチングを目指したいと思っています」

 6月中旬に行われた青森山田との練習試合では、引き分けとなったが、2失点完投。
 「9回に追いつかれましたが、上手く粘って同点に留めることができました」

 この時期、試験期間中であまり練習ができておらず、マックスの力を出せなかったというが、最速138キロを7球計測。球場のガンでは140キロを超えていると思わせるボールは何球かあり、下級生の時よりもたくましくなっている姿が見られた。

 下級生から期待をかけられた大器は、この夏、完全覚醒を果たし、2年連続の夏の甲子園に導く。

文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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