「自己否定」と向き合い続けた江原佑哉(筑陽学園)の主将力
昨年11月に行われた明治神宮野球大会で、ベスト4に進出した筑陽学園。初出場ながら高い総合力を見せつけ、2回戦では関東地区代表の強豪・桐蔭学園を10対1の7回コールドで撃破。選抜甲子園初出場での上位進出に大きな期待が高まっている。
今回は、そんな筑陽学園を主将として引っ張る江原佑哉選手に独占インタビューを行い、入学後の道のりから神宮大会までを振り返っていただいた。
「人間性の向上」を求めて己と向き合い続ける
練習中は主将として声を張り上げる江原佑哉(筑陽学園)
―― 神宮大会はお疲れ様でした。今日はよろしくお願いします!それではまず筑陽学園に入った理由から教えてください。
江原佑哉(以下、江原) 勉強もその野球も両方に力を入れていて、文武両道なところに惹かれて自分は筑陽学園に入りました。試験期間などは夜遅くまで起きて勉強しています。
―― いざ筑陽学園に入学して、まずどんなことを感じましたか。
江原 すぐに3年生のシートノックを見させてもらったんですけど、やっぱり動きとか声とか、そういったのが中学校と全然レベルが違っていて、そこにまず驚きました。
まず先輩方のノックを見て圧倒されて、ちょっとここで下級生の時か活躍できるのかなて少し不安にはなったんですけど、練習を重ねるごとにどんどん自信がついていきました。
―― 今一番の自分の持ち味は何だと思いますか?
江原 自分はレフト、センター、ライト、どこでも広角に打てるバッティングが持ち味だと思います。
―― 反対に今の課題を教えてください
江原 変化球を打つのは上達してきましたが、真っすぐで差し込まれてしまうことが多くなってしました。やっぱり4番を打っているので、変化球が多くなるというのはありますが、勝負時にいい真っすぐが来た時に、どうやって差し込まれずに対応できるかっていうのが課題です。
ノック中も気合がみなぎる江原佑哉(筑陽学園)
―― 新チームになってからはキャプテンを任されました。キャプテンとして、どんな意識を持ってチームを引っ張ってきましたか?
江原 江口先生に特に言われることは、キャプテンと個人の選手は別なので、自分のプレーでチームの士気を下げることが絶対ないようにということです。自分のプレーの内容がもし悪くても、絶対チームの雰囲気は上げるようにすることを意識してやっています。
―― そんな中で、新チームが始まって最初の公式戦の福岡地区高等学校新人野球大会では福岡工大城東に2回戦で敗れました。敗退後はメンバーのみで合宿を行ったそうですね。
江原 遠征では、人間性が野球のプレーに入っているということを江口先生に言われました。例えば自分は、人間としてもすぐに物事を決めることや冷静に正しい判断をすることができず、それが野球のプレーでも出てしまいます。
そういうのをもっと日頃の生活から意識しないと、野球でも正しい判断と決断ができないということを言われました。
―― 大学の練習にも参加したと聞きましたが、レベルもとても高かったと思います。参加しての感想も聞いていいですか?
江原 アップから声の張りとか、練習に対する姿勢や1球に対する姿勢、真剣味が自分たちとは大きく違っていました。とにかく活気あり、責任感のある練習をしていました。
[page_break:捲土重来の土台となったのは気持ちの強さ]捲土重来の土台となったのは気持ちの強さ
江原佑哉(筑陽学園)
―― そんな遠征の成果として、秋の大会では破竹の勢いで九州王者まで勝ち上がっていきました。印象に残っている試合はありますか?
江原 県大会準々決勝の飯塚戦ですね。中盤まで0対0の同点だったのですが、犠牲フライで先制点を与えてしまいました。これまでの遠征前の自分たちだったら、雰囲気も下がったまま1対0で終わってたと思うんですけど、そこからもう一回自分たちがスイッチを入れ直して、ベンチで声を出し続けました。
そしたらチャンスの場面で、野手の間にたまたま打球が落ちて1対1の同点になり、その後に逆転して勝つことができました。江口先生の仰っていた「勝ちたいと思う気持ちの強い方」が勝つというのが、出たんじゃないかなと思います。
―― 九州王者として迎えた神宮大会のことも伺いたいと思います。ベスト4にも進出して、手応えを掴んだところもあったのではないでしょうか?
江原 1試合目の桐蔭学園戦はたまたま点差が開いて勝つことができましたが、ベスト4まで行くことは出来たので、自分たちがこれまでやってきたことが間違ってなかったんだなと。
ただ課題も出ました。札幌大谷戦は(相手投手は)ほとんどが動くボールで、福岡県大会でも九州大会も見たことないような球でした。やっぱり対応力が課題じゃないかなと思いましたし、どういうピッチャーがきても対応できるような準備とかそういうのは必要があるなと思いました。
―― それではここからは選抜甲子園に向けた質問になります。まずは、江原選手個人としての選抜甲子園での目標を教えて下さい。
江原 個人としては、守備面にしてもバッティング面にしても、もう一回りレベルアップしないと全国大会に出ているだけになってしまうと感じています。レベルが高いピッチャーがたくさんいると思うので、そういうピッチャーに力で負けないように練習していきたいです。
ロングティーを行う江原佑哉(筑陽学園)
―― チームとしては、当然やるからには優勝を狙ってくと思います。その為に、今後チームとして取り組んでいきたいことはありますか?
江原 神宮大会では、札幌大谷とかはやっぱり体が自分たちの一回り大きいなと感じました。まずはウェイトトレーニングをしっかりやって、「筑陽学園はデカイなぁ」と思わせるぐらい全員がもう一回り体を大きくして選抜に臨みたいです。
―― 甲子園で対戦したいチームやバッターはいますか?
江原 自分は智辯和歌山ですね。1年生の時から夏の甲子園で主力で出ている選手が何名かいるので、そういう相手を倒さないと本当に強いチームとは言えないと思うので対戦したいです。
―― ありがとうございます。それでは最後の質問になるのですが、最終的にはやっぱり夏の大会が大きな目標になると思います。今イメージできる範囲で、最後の夏でどんな戦いをしたいか教えて下さい。
江原 九州大会も相手に負けないくらいの粘り強い野球をして勝ってきたので、そういったところをやっぱり夏も継続させたいと思います。自分たちは大差で勝つことはあまり出来ないと思うので、接戦で粘り勝つというのをもう一回、夏までに詰めていきたいと思います。
編集後記
インタビュー中は一言一言を慎重に、言葉を選ぶように答え、とにかく面構えの良さが印象に残った江原選手。「主将として下手な言動はできない」という強い責任感と、「決して浮かれてはいけない」という自律心が垣間見え、筑陽学園が秋に見せた「捲土重来」の根源を見た気がした。
そのひりつくような主将力が、甲子園で大きな輝きになることを心から祈っている。
文=栗崎 祐太朗