Interview

岐阜の二刀流・中神拓都(市立岐阜商)「同じ岐阜県出身のライバルに負けたくない!」【後編】

2018.06.11

 前回までは主将としての苦労、そしてバッティングをメインに話を聞いてきた。今回は最速146キロを誇るピッチング、岐阜センバツや関東第一などの高いレベルから受けた刺激、最後に夏への意気込みを伺った。

キレのある真っすぐで真っ向勝負

岐阜の二刀流・中神拓都(市立岐阜商)「同じ岐阜県出身のライバルに負けたくない!」【後編】 | 高校野球ドットコム
ピッチング練習をする中神拓都(市立岐阜商)

 打っては46本のホームランを積み重ねている中神拓都。そのバッティングに注目が集まるが、投げては最速146キロを投げる剛腕でもある。そんな剛腕を支えているのは、指先だった。

 「無駄な力を入れてもいいボールはいきません。ボールに勢いをつけるには、リリースの時にいかに指先に力を加えるか」と考える中神。そのためにウエートトレーニングではリストを鍛え、ボールに対して強く押し込めるように鍛えた。その結果、ボールのキレも増してきた。

 これも中神の狙い通りだった。「自分はただの速いストレートではダメだと思っています。大切にすべきはキレだと思っています」。だからこそ、リストの強化を図ったのだ。

 ただ、修正すべき課題も抱えている。それは腕の振り方である。「体の開きが早いので、腕が横振りになりがちです。そのせいでボールの回転が悪くなるだけでなく、コントールも安定しない。良いことは何もないです」と話し、この課題に対して真正面から向き合っている。

 意識しているのは、グローブを持った腕だ。「腕を縦振りさせたいのですが、それは利き腕だけではなく、グローブの方の腕もしっかり縦回転させることで縦振りを体に染み込ませています」。

 こうした意識を持って普段の練習に取り組んでいる中神だが、どんな投手を理想としているのか聞いてみると、福岡ソフトバンクホークスの五十嵐亮太投手の名前を挙げた。MLBも経験した剛腕の心構えを参考にしていると話す。

 「勝負はやる前から逃げてはいけないと思っています。だからこそ相手に向かっていく強気なピッチングで、ストレート中心に投げていきたいと思っています。」

 五十嵐選手のような気迫あふれるピッチングの姿に心揺さぶられている中神。これから迎える夏では、その強気が必要不可欠である。グランドで見せる闘志あふれるプレーに期待せずにはいられない。

[page_break:全国クラスからの刺激]

全国クラスからの刺激

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中神拓都(市立岐阜商)

 その闘志に更なる刺激を与える人物たちがいる。大阪桐蔭根尾昂木更津総合野尻幸輝ら、全国クラスで活躍する岐阜県出身のライバルたちである。

 「自分は軟式だったので直接的な関わりはなかったです。ですが、同じ岐阜出身の同世代が甲子園でプレーしているのを見ると、負けられない」と闘志を燃やしている。

 しかし同郷のライバルたちだけが、中神の闘志を燃やしているわけではない。県大会前に開催した招待試合で、東東京の名門・関東第一と試合をすることができた。また、練習試合では、昨夏の西東京代表で今春の東京都大会ベスト8の東海大菅生とも試合を行った。

 東海大菅生には名手・田中幹也がいる。同じポジションで同学年。中神は、田中から大いに刺激を受けた。
「守備の動きの良さはもちろん、身体が小さいながらスイングスピード・選球眼が凄くいい。それでいて、低くて強い打球を飛ばす」ところに学ぶことが多かった。なぜならば、自身の理想とする打球に近かったからだ。

 「理想はショートがジャンプしてギリギリ取れなかったライナーがぐんぐん伸びて左中間を破るような低い打球」だと話す中神にとって、田中が放つ打球はまさにそれだった。

 こうして中神拓都という一選手として、多くの刺激を受けている。一方で、主将・中神拓都としても岐阜県選抜で学んだこともあった。

[page_break:四刀流で挑む夏]

四刀流で挑む夏

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中神拓都(市立岐阜商)

 「市立岐阜商の中では多くの方から注目されました。ですが選抜では上手い選手が多くいたので、自分の実力はまだまだ」だと感じている。だが、主将としての働きかけもこの選抜で学んだ。

 「選抜の時の雰囲気はやりやすかったです。理由を考えると、明るい雰囲気にあると思ったんです」。 チームはリズムや勢いに乗れない時に声掛けが疎かになってしまい、自分たちでマイナスの雰囲気を作り出してしまうことで焦りを生んでいた。そこに主将としてチームの課題を感じていた中神にとって、この経験は大きかった。

 事実、現在のチームは声掛けを大事にしており、常に明るい雰囲気の中で練習が行われている。

 今春は県大会2回戦の関商工戦に2対3で敗戦。残すは夏のみとなった。
 「自分たちで考えてプレーすれば、実力以上のプレーができるはずだと思っています。夏は3年生25人で笑って終われるようにアグレッシブに自分たちの野球をやりたいです」。

 こうしてインタビューの最後を締めてくれた中神は、打って・走って・守って・投げてチームを引っ張りたいと誓った。主将としても手本となるような姿を目指す中神の四刀流の戦いは、夏に爆発するだろう。

文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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