走ることをメインに体を作りながら、12月に入るとボールを握り始める。30~50メートルぐらいのキャッチボールの中で意識するのは、6割程度の力で投げて、その力のボールをしっかりと投げ切ることだ。
「変な言い方になりますけど“60パーセントの力を100パーセント出す”という感覚です。100パーセントの力で投げても100パーセントの力はなかなかボールに伝わらない。70パーセントでも難しいですかね。自分の中では60%ぐらいが、いろんなことをチェックするのに一番いい力なんです」と、キャッチボールの1球に全神経を集中し、自分の感覚を研ぎ澄ます。そこにはリリーバーとしての生き様が集約されていた。
「なんだかんだ言っても、やっぱり肩は消耗品ですから。キャッチボールして、そこからピッチングして、そこで納得いかなければネットスローするというのは、ホントにダメだと思うんですよ。キャッチボールの段階から1球1球丁寧に投げれば、最後のネットスローなんて必要なくなる。野球はキャッチボールが基本。それでフォームを固めるであったり、ボールの質を高めたりという意識が大事」と、基本の重要性をサラリと言えるあたりが、やはり一流だ。
自分に合ったフォームは年々変わっていく

宮西 尚生投手(北海道日本ハムファイターズ)
フォームのチェックポイントは、軸足である左足の内転筋でしっかりと体を支えられているかということと、もう一つは右足の上げ方。「自分で居心地のいいところに足が上がってくるかどうか。毎年、体は違ってくる。年齢も重ねて、なおかつこれだけ投げていれば、疲労も完全に抜けることはない。だから去年のフォームが良かったからといって、今年もそれがいいとは限らない。その年のコンディション、体型というのがあると思うんで、それに合ったフォームをいち早く自分の中で見つけ出すこと。これはキャンプの中盤ぐらいまで探し続けますね」と試行錯誤を繰り返しながら、その年のフォームを作り上げていく。
じっくりと自分の体と対話しながら仕上げていき、ブルペンに入るのはオフの後半から。「ここではまだ立ち投げで、力も50パーセントぐらい。徐々に球数は増やしていきますが、最高でも70~100球以内ですね」と焦ることはない。キャンプインまでに100パーセントの力で投げられる状態にはもっていくが、捕手を座らせて投げる時は30~50パーセントの力で十分だという。
「若い頃は結構早い時期からバンバン投げていましたけど、体さえしっかり作っておけば、そう簡単にフォームは崩れない。体に染みついたものもありますから」と、納得できる体を作ることを最優先し、オープン戦から開幕にかけての実戦でフォームを完成させていく。